2015年3月14日土曜日

アメリカン大学教授が暴いた米国メディアのフクシマ過小評価・歪曲報道

研究が暴いた米国メディアのフクシマ過小評価報道
Study Finds US Media Downplayed Fukushima Daiichi
2015313
新たな研究が、福島第一原発核惨事に関するメディアの報道姿勢を究明した[出処(英文)]。同研究は、主要報道機関が読者と情報源を立脚基盤にしながら、組織的に災害の影響を過小に評価して報道し、災害のきわどい側面を無視していることを明るみに出した。
同研究はまた、メディアに介入し、報道内容をコントロールする連中に見る重要な歪曲を指摘した。
「研究によって、企業と政府機関がメディアに限度をわきまえずに介入し、事態を歪曲させていることが示されているとパスカル教授はいう。惨事勃発後の歳月においてさえ、政府や企業の広報関係者が発言報道の大部分を独占しているのだ。また、地域の対応――たとえば、学校給食の放射能から子どもたちを守るために結束する親たちの動き――についてのニュース解説などはほとんどお目にかからない」(強調は当サイトによる)
これは災害初期の問題であり、業界の利害関係者が惨事を引き起こしながら、情報源の多数派を占めたり、メディアによるインタビューの相手になったりしていたのだ。この問題は今日も相変わらずつづき、米国における4周年メディア報道の十把一絡げが、インタビュー対象に業界広報担当者を使い、手厳しい質問を聞きそびれていた。米国で2011311日にオンエアされたボストンNPRニュース・ステーション“Here & Now”ラジオ・インタビュー[4 Years After Fukushima, How Is The Nuclear Industry Faring?]は、核産業のロビイスト[訳注:ジョナサン・コブ(@WNAJonathanCobb)、世界原子力協会の気候変動に関する顧問]とお話していた。インタビュー記者はヘボ投球の缶詰みたいに聞こえる質問を繰り出し、ロビイストがやすやすと業界の言い分を押し付けるのを許していた。筋書きの余談として、核問題機関(NIRS=放射線医学総合研究所)の声明に少しだけ触れていた。この類いの報道が、米国におけるフクシマ報告の典型例である。
同研究はさらに、政治的惨事の様相、一般人が受け取る筋書きと情報に介入する営為を指摘する。
「主流メディアは――印刷物であれ、オンラインであれ――一般住民に対する健康リスクを報告したり、官僚とその御用専門家のお話しに異議を唱えたりするようなことは、ほとんどなにもしていません。災害に伴うリスクに関する論争は、異常事態の存在とその意味、そしてその影響をコントロールするための政治闘争なのです。惨事に関する知見の報道のありかたは、人びとの命に対する身体的な影響を左右するよりも、力関係を動かすのです」(強調は当サイトによる)

天災というものは、ある程度、こうした問題を引き起こすものだが、政府が利害関係を持ちながら、国民の安全をはかるために規制しているはずの業界に由来する人災となれば、政治化しがちであるのは、なおさらのことである。


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フクシマ核惨事による住民の健康リスクを最小評価する報道
News coverage of Fukushima disaster minimized health risks to general population
Date: 2015311
Source: アメリカン大学
Summary:
A new analysis finds that U.S. news media coverage of the Fukushima disaster largely minimized health risks to the general population. Researchers analyzed more than 2,000 news articles from four major U.S. outlets.
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2011年、福島第一原発の核惨事勃発から4年、損壊した施設からいまだに毎日3トンの放射能汚染水が海中に放出されているが、米国メディアがこの惨事を大見出しで報道することはもはやない。[福島]県の住宅、文教、ビジネス地区が居住不能になっており、おそらく永久に住めないようである。それなのに、米国のメディアは社会がいまだに抱えているリスクを報道しない。
アメリカン大学の社会学教授、セリーヌ=マリー・パスカル(Celine Marie Pascale)による新たな分析は、米国の報道機関による核惨事に関する報道の大部分が一般住民の健康リスクを最小限に評価していたことを明らかにした。パスカル教授は、2011311日の惨事勃発時から2013311日の2周年記念日までの2年間、米国の主要メディアが報道した2,000本以上のニュース記事を分析した。日本国内または国外の一般住民に対する健康リスクに焦点を絞った報道は、6パーセント――129記事――だけだった。それどころか、損壊した原発の労働者についていえば、人間のこうむるリスクが歪曲されていた。
不適当な報道姿勢
パスカル教授はリスクの社会構造および21世紀におけるリスクの意味を研究しているが、「一般住民のリスクを論じる記事がいかにも少なく、たとえ論じたとしても、判で押したようにリスクを低いものに描いているのを見るのは、衝撃的でした」と述べた。「わたしたちは、一流の報道機関が、崩壊した福島第一原発から発散される放射線よりも宇宙線や岩石の放射線のほうが危険であると主張しているありさまを見ているのです」
パスカル教授は、新聞2紙、ワシントン・ポストとニューヨーク・タイムズ、およびオンライン報道機関として全国的に名高い2サイト、ポリティカとハフィントン・ポストのニュース記事、論説、投稿記事を調査した。これら4社の報道機関は米国で最も名高いだけでなく、テレビのニュース番組やトークショー、他の新聞やブログで最も盛んに引用され、ソーシャル・メディアでもよく取り上げられているとパスカル教授はいう。彼女は、だから、メディアがリスクを描く様相を理解すれば、国民の関心事と話題が歪曲されている様相を洞察できると付け加える。
パスカル教授の分析は、放射能汚染による一般住民の健康リスクを最小化する報道機関の主だった3つの方法を特定した。報道記事は、①日常的で低レベル形態の放射線と比較し、②長期にわたる研究が不足しているので、リスクをわからないと決め付け、③支配的な話法に異を唱える専門家や住民が表明する懸念を大幅に除外していた。
研究によって、企業と政府機関がメディアに限度をわきまえずに介入し、事態を歪曲させていることが示されているとパスカル教授はいう。惨事勃発後の歳月においてさえ、政府や企業の広報関係者が発言報道の大部分を独占しているのだ。また、地域の対応――たとえば、学校給食の放射能から子どもたちを守るために結束する親たちの動き――についてのニュース解説などはほとんどお目にかからない。
リスクのグローバル化
パスカル教授は、一般人が批判的なニュース消費者である必要性を彼女の調査結果が示しているという。専門家の知識は――とりわけ災害時に発生する情報の真空状態において――虚偽情報や不明確状況を仕組むために悪用されかねない。
「主流メディアは――印刷物であれ、オンラインであれ――一般住民に対する健康リスクを報告したり、官僚とその御用専門家のお話しに異議を唱えたりするようなことは、ほとんどなにもしていません」と、パスカル教授は語った。「災害に伴うリスクに関する論争は、異常事態の存在とその意味、そしてその影響をコントロールするための政治闘争なのです。惨事に関する知見の報道のありかたは、人びとの命に対する身体的な影響を左右するよりも、力関係を動かすのです」。
福島第一原発の核惨事が、すべての災害と同じように、地震と津波の帰結であることは明白だが、広範な規模のリスクを生みだしたものは、政治的、経済的、社会的選択の結果でもあった。21世紀になって、「リスクのグローバル化」がますます進展しているとパスカル教授は論じる。大惨事には、人間、環境、経済に対して、大規模で長期にわたる影響をおよぼす可能性が潜んでいる。
「災害に対する人びとの理解は、これからもメディアに仕組まれつづけるでしょう。メディアの人たちがリスクの存在と災害の特質を歪曲あるありかたが問題なのです」と、パスカル教授はいう。


記事出処:
上掲記事は、アメリカン大学サイト掲載の記事にもとづいています。オリジナル記事の筆者はレベッカ・バスです。記事内容を編集したり、短縮したりしていることがあります。

American University
[訳注:この記事はScience Daily®記事の原典であり、同じ内容]
American University sociologist’s new research finds few reports identified health risks to public
·         By Rebecca Basu
·         March 10, 2015
アメリカン大学の社会学者による新研究が、フクシマ核惨事報道に関して、一般人の健康リスクを特定するニュース記事がほとんどないことを明らかにした。
Associate Dean for Undergraduate Studies
Department of Sociology

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