2015年5月27日水曜日

英紙ガーディアン「日本が7月の米豪共同軍事演習に初の参加」(AFP配信)

Winner of the Pulitzer prize 2014

日本が7月の米豪共同軍事演習に初の参加
Japan joins US-Australian military exercise in July for first time

2年ごとに実施されるタリスマン・セーブル(守り刀)演習は約27,000名の男女軍人を動員し、米国と同盟諸国の協調関係を実演してみせることになる。

ウルルで試験行動中の偵察部隊。日本は77日にはじまる2015年タリスマン・セイバー演習に40名の部隊を派遣する。写真:デイヴィッド・ラーキン1等准尉/国防省

フランス通信社(AFPAgence France-Presse
2015526

米国がしだいに自己主張を強める中国を前にして同盟諸国との絆を強固にしようとしているおりから、日本の部隊がこの7月に初めて大規模な米豪軍事演習に参加する。

日本の陸上自衛隊――同国の陸軍――が、約27,000名の軍人男女を動員して77日にはじまる2年ごとの演習に40名の隊員を派遣すると日本政府のスポークスマンが述べた。

「わが国は直にオーストラリア軍とともに行動するというより、米国海兵隊との共同演習に参加する」と、彼は話した。

だが、日本とオーストラリアの防衛協力関係を強化する「努力の一端として、わが国の参加を見ることができる」。

ロックハンプトンとダーウィンの近くの2か所でおこなわれる演習は、「水陸両面作戦の戦術技能を改善し、日米行動連携を強化すること」をめざしている。

日本参加のニュースは、中国が南シナ海の紛争海域で人工島建設を加速化している振る舞いに批判が募り、緊張が高まっているさなかに届いた。

米国は、礁埋立地の12海里内――自然の陸地の周辺の場合、領海域――への軍艦と偵察機の派遣を考えている。

そのような展開は、世界的に重要な海上交通路が横切る海域での対決につながりかねない。

中国政府は南シナ海のほぼ全域を自国の海とみなしており、米国の同盟国であるフィリピン、それにヴェトナム、その他の国ぐにが自国領と主張しているスプラトリー列島[南沙諸島の英語名]の人工島に急速に滑走路を建設していることが衛星撮影画像で確認できる。

中国は東シナ海で別個に、日本の実効支配下にある尖閣諸島を魚釣群島と呼び、領土紛争を抱えている。

日米両国は、地域内の志を同じくする諸国との安全保障協力関係を固めようと尽力してきた。

20147月には、米国、インド、日本の三国は1周間の日程で太平洋上の作戦演習を挙行した。

このマラバル演習として知られる毎年恒例の催しは、通常の場合、米印両国間でおこなわれ、日本国海軍が参加するのは、2007年以降で3度目になる。

2015年5月26日火曜日

英紙ガーディアン「中国の“常軌を逸した”原発増設計画に警告」


Winner of the Pulitzer prize 2014

中国の“常軌を逸した”原発増設計画に警告
Chinawarned over 'insane' plans for new nuclear power plants

中国有数の科学者、何祚庥は、フクシマ惨事後の反応炉新設禁止令を撤回したあと、中国が安全管理にじゅうぶんな資金を投じていないという

海南省、長江原子力発電所の建設作業。中国の原発拡大計画の一環として、3つの行政区が新規原発の立地点に選ばれた。Photograph: AP

エマ・グラハム=ハリスン EmmaGraham-Harrison 北京駐在

2015525

中国の原子力発電所を急速に増設する計画は、安全管理にじゅうぶんな投資をしていないので「常軌を逸している」と、中国有数の科学者が警告した。

中国が2011フクシマ惨事後に導入した原発増設モラトリアムを終了し、内陸に原発を建設する提案は、事故が勃発すると、数百万の人民が水源として頼っている河川を汚染し、広大で重要な農業地帯の地下水源を損なうので、特に危険性が高いと物理学者の何祚庥(カ・サシオ)はいう。

中国2011年に安全基準を見直すために新規反応炉の認可を中止したが、2020年までに日本の核発電容量を追い抜き、10年後には世界一の原発大国になる企ての一環として、3月に2基の建設にゴーサインを出した。

バラク・オバマは最近、米中核協力協定を改定する計画を発表しており、これが実現すれば、中国は米国が設計した反応炉をさらに多く購入し、使用済み燃料からプルトニウムを抽出する技術を追求する可能性が広がることになる。

政府は、大気汚染と温室ガス排出を削減するとともに、輸入石油・ガス依存を抑えるための幅広い取組の一環として、核発電の拡大を熱望している。

何は中国の核兵器プログラムに取り組んできたが、計画された日程の進行が速すぎ、事故を避けるための安全・監視技能が確保できないと述べた。

何は中国科学院でガーディアンのインタビューに応じ、「核エネルギーについて、いま中国で二つの声が聞こえます。一方が安全優先といえば、他方が開発優先といっています」と語った。

何は、「腐敗、管理能力と決断力の乏しさ」もリスク要因に挙げた。「彼らは2020年までに58(ギガワット核発電容量)に、やがて120ないし200に積みあげたいとしています。これは狂気の沙汰です」。

何は科学の素養が高く評価され、1950年代の北京城壁の取り壊し、1990年代の宗教団体・法輪功に対する弾圧など、物議をかもした問題で政府を支持してきた古くからの姿勢から考えて、核計画に対する彼の意義には、格別な説得力がある。

何は、中国が認可済みや建設中の施設を完成しだい、拡大路線をいったん停止し、拡大を再開するなら、数十年間は安全操業の経験を積んでほしいと望んでいる。国内で稼働中の反応炉は、ほぼすべて2000年以降に始動したものである。

何はこういう――

「中国の現状では、事故の可能性を正しく判断できるほどの経験を積んでいません。反応炉の数と安全に運転してきた年数が揃って問題なのです。

「フクシマ後の安全審査の結果、いくらか問題が見つかりましたが、些細なものばかりで、最終結論は中国の原発は安全ということになりました。だが、安全検査は旧来の基準にもとづいて実施され、その基準そのものが大幅な改善を要することが明白なのです」

中国の政府当局者らはチェルノブイリとスリーマイル・アイランドの事故のあと、核技術が改善されたと主張するが、両方の事故で見受けられたヒューマンエラーと安全管理体制の不備を無視していると何は語った。

フクシマ原発の事業会社は、訴訟や反対運動を恐れるあまり、地震と津波に先立って強力な事故予防策を実施できなかったことを認めている*

「日本のほうが優秀な技術と優秀な管理体制を備え、米国とソ連から学ぼうと懸命に努めていたにもかかわらず、事故を避けることができませんでした」と、何はいい、中国の核監視にあたる人材は日本より少なく、給料も低くて、最も優秀な若手科学者を惹きつけないと付け加えた。

中国は基準の強化を考えていたが、急速な拡大を求める圧力がすさまじく、事業会社が有力なので、企業利益を国家安全保障に優先させ、引っ込めてしまったと何は語った。

「過去4年にわたり、基準の強化が内部で議論されましたが、強化が実現すれば、投資がもっと必要になり、原発の競争力と収益性が影響をうけることになります。わが国の基準が低いので、核エネルギーのコストが安上がりなのです」と、何はいう。

政府は弱みをさらす論争を奨励するどころか、議論を撲滅しようとしており、役人に歯向かうことがリスクをともなう国に、内部告発者を後押ししたり擁護したりするメカニズムは存在しない。

何は、「環境保護部はたった今、新しい規制機関の設置を考慮しています。わたしは議論に招かれたとき、『あなたがたの安全性監視機関は独立しておりません。国営の核企業に耳を傾けていますので、検査がまやかしになっています』と申しあげました」という。

何にとって最大の懸念事項のひとつは、内陸部に原発を建設することによって積極的な拡大計画を達成する提案である。3つの行政区がすでに原発立地点を選定し*、準備作業をはじめており、他にもいくつかの立地点が提案されている。

中国は水不足であり、日常の運転時や緊急時にじゅうぶんな冷却水を確保できる地域は、人口密集地である。何は、「あの人たちは砂漠に原発を造ればいいというのですが、問題なことに、砂漠に水はありません」といった。

都市近郊や農業地帯に原発を建設すれば、どのような事故であっても、フクシマの放射能漏れ*のような即座のフォールアウトと長期的な汚染のため、数百万の人民を危険にさらすだろう。

何は次のようにいう――

「水の多い場所に原発を造るなら、放射能漏れの影響は極めて甚大になるでしょう。100パーセント安全であると保証できるなら、わたしは反対しませんが、だれにも保証できません。

「実をいえば、わたしはすでに88歳であり、わたしにとって、原発が安全かどうかはそれほど関係ありません。ですが、わたしはわれわれの子どもたちの福祉を心配しており、新規プロジェクトの収益性を評価するばかりであってはなりません」

取材協力:ルナ・リン

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20141122日土曜日

2015年5月25日月曜日

鉱業ニュース「ウラニウム業界は一歩前進、二歩後退」~世界の投資家は日本の原発再稼働の動きに一喜一憂

ウラニウム業界は一歩前進、二歩後退
Onestep forward, two steps back for uranium: report
アンドリュー・トープ Andrew Topf 2015524

ダンディ・キャピタル・マーケッツの最新報告によれば、核燃料価格とウラニウム採掘企業に影響をおよぼす可能性のある3つの動きがあり、ウラニウム投資家は短期的には警戒を迫られている。

ダンディの部門専門家3名が執筆した報告によれば、この3つの要因は、2011年福島事故後に停止している日本の核反応炉の非常に重要な再稼働と東京電力の動きに関連している。

東京電力に関しては、経費の削減に併せ、閉鎖中の原発の再稼働が不透明であることから、同社が在庫しているウラニウムを売却したがっていると伝えるメディア報道がある。売却額はスポット市場規模の15パーセント、昨年のウラニウム取引総額の3パーセントにあたり、これでは市場がだぶつくのにじゅうぶんであり、多くの関係筋は価格を押し下げると恐れている。ダンディは、市場が短期的な影響をこうむるが、「ウラニウム生産が反応炉側の必要量に追い付いていない」と反論する。

市場に悪影響をおよぼしかねない第2の要因は、大阪の北方に近接する大飯原発の停止中の反応炉2基を再稼働させる計画を実行することを関西電力に禁じた裁判所の決定である。

訴訟の対象になった大飯原発の反応炉2基は、2012年に一時的に再稼働されており、フクシマ後に発電を再開したのは、日本国内でこの2基だけである。だが、2基とも昨年9月に点検のために再び停止した。

この決定は、関西電力が核反応炉の安全性を法廷で証明できるまで、再稼働できないことを意味する。ダンディは、このニュースは需要以上に投資家心理に影響し、「わたしどももまた、この訴訟と差し止め命令がビジネスを前進させる正常なコースに戻されることを期待しております」と記す。

報告によれば、期待できるウラニウム市況動因は、日本で5番目の核反応炉と3番目の原発の再稼働が認可されたことに関連している。愛媛県の四国電力伊方原子力発電所3号炉が地震と津波に対する安全防護対策が強化され、安全審査で承認されたので、投資家心理が上向くだろうとダンディは述べる。3号炉は2016年はじめに始動すると期待されている。

ダンディは投資家に向けて、ウラニウムのスポット価格とウラニウム株の短期的な弱含みを予測し、したがってUr EnergyUranerz EnergyEnergy FuelsCamecoなどに対する固定価格契約を推奨している。ダンディは、Paladin Energy (TSX:ASX:PDN)を避けることと助言し、長期見通しとしては、ウラニウム探鉱企業はおおむね影響を受けないと見ている。

【記事の元ネタ】

5月20日付けDUNDEE CAPITAL MARKETS - Uranium Sector Outlook (PDF)

表1.再稼働認可を提出した日本の核反応炉の現状

2015年5月24日日曜日

スミソニアン誌「フクシマ核惨事から4年、鳥たちの苦境」


Smithsonian.com 総合雑誌スミソニアン

フクシマ核惨事から4年、鳥たちの苦境

まるで鉱山のカナリアのように、鳥の多寡が野生生物に対する核惨事の影響の悲惨な全体像を反映しているのかもしれない

スズメはフクシマ周辺で生息数が減っている鳥類30種のひとつである。(Takao Onozato/Corbis

ベン・ミリン Ben Mirin
スミソニアン誌 SMITHSONIAN.COM 
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ティム・ムソー(Timothy A. Mousseau)が初めて鳥類の生息数を数えに福島へ赴いたとき、彼が訪れた各地の放射能レベルは通常のバックグラウンド値に比べて1,000倍に達するほど高かった。それは20117月、東北地震とそれが引き起こした福島第一原子力発電所の部分的メルトダウン事故*4か月後のことであり、日本は社会基盤の甚大な被害からの回復途上にあった。ムソーの彼の共同研究者が車をレンタルし、東京から北上したさい、いまだにちょっとした路上の難所に行き当たるありさまだった。

「だれもほんとうに予想しないような(放射能汚染の)初期の影響を把握できるように、わたしたちは現地に赴かなければならないとわかっていました」と、ムソーはフクシマ惨事のニュースを見て考えたことを振り返った。「わたしたちは結局、あの最初の年にできる最善の方法は単純に鳥を数えることだと納得しました」。

4年間かけて福島第一原発の周辺400か所で鳥類の個体群を調査したいま、ムソーと彼の研究仲間たちは鳥類個体群を指標システムに使って、地域野生生物に対する惨事の影響に関する険悪な姿をまとめあげた*。放射能が県土全域で減少してはいても、鳥類種の数と個体生息数が急激に減っており、状況が年ごとに悪化していることを研究チームのデータが示している。

「最初、ほんの数種に放射線の影響の有意な兆候が認められていました。今では、(安全地帯から)もっと、もっと線量レベルの高い、そうですね、曲がり角あたりまで5キロか10キロも深入りすると、死のような静けさです。運がよければ、1羽か2羽、目にすることでしょう」と、ムソーはいう。

ムソーの研究チームは鳥の個体計数調査を総計2,400回実施し、鳥類57種のデータを収集しており、それぞれの種がバックグラウンド放射能に対する特定の感受性を示していた。彼らは鳥類学ジャーナル3月号で公開した論文で、鳥類のうちの30種で調査期間中に個体数の減少が認められたと報告した。そのなかでも、ハシボソガラスやスズメなどの留鳥は、3月上半期の部分メルトダウンから数週間後まで県土に到来しなかった渡り鳥に比べて、感受性が高いことが認められた。

人類史上で核事故は稀であり、野生生物に対する放射能の直接的な影響に関するデータの持ち合わせは非常に少ない。ムソーはこれまで15年間かけて、核事象ごとの比較研究を実施しており、わたしたちの知識基盤を構築し、隙間を埋めるために貢献してくれている。たとえば、チェルノブイリ惨事が野生生物におよぼした初期の影響に関する公式発表記録は存在しないものの、近年になって、地域の鳥類から森林の菌類*まで、事故後におけるチェルノブイリの生態系を評価するための研究が数多く実施されている。

ムソーは2012年にフクシマを再訪問したとき、放射線被曝地帯で白脱色した羽毛の斑点を有する鳥を捕獲しはじめた。これは馴染みのある兆候だった――「わたしが2000年に初めてチェルノブイリに赴き、鳥類を収集したさい、ある格別に汚染された農場の(捕獲した)鳥の20パーセントに、[体表の]あちこち――サイズが大小さまざま、文様が規則的だったり不規則だったりする――白色羽毛の小斑点が認められました」

ムソーの研究チームは、これらの白斑は放射線被曝に起因する酸化ストレスの結果であり、そのために鳥の羽毛やその他の体部位の配色を制御する鳥の抗酸化物質保有量が減衰したのだと考えている。チェルノブイリでは、白斑は、白内障、腫瘍、非対称体型、発育異常*、繁殖率低下、頭脳サイズの縮小など、放射線被曝による他の既知の症状と効率で一致している。

* Even Tiny Amounts of Radioactive Food Made Caterpillars Become Abnormal Butterflies


2013年になると、フクシマでムソーが計数していた鳥に、双眼鏡で見ることができるほど大きな白斑があった。

ムソーは兆候を総合して、チェルノブイリとフクシマのデータセットが、核惨事後のさまざまな段階における放射線の長期にわたる野生生物に対する蓄積的影響*の有意な証拠を提示していると考えている。だが他にも、入手可能な情報をまったく異なった形で解釈する専門家もいる。

「わたしは酸化ストレス仮説を無条件に信頼できない」と、“Chernobyl: Catastrophe and Consequences”[『チェルノブイリ~破局と帰結』]の編集・主著者にして地上・海洋生態系の専門家、ジム・スミスはいう。「フクシマでも、チェルノブイリでも、最近の放射線レベルは低線量であり、細胞の抗酸化能力は、このレベルの放射線の酸化作用に比べて、一回りも二回りも大きいのです」と、彼はいう。この説によれば、羽毛の白斑は――それに、たぶん鳥の衰退全体は――放射線以外のなにかに引き起こされたことになる。

鳥の羽毛は、わたしたちの髪色が年配になると変わるのとよく似た老化の副作用として、色が変わることが多い。羽毛はまた年に数回の換羽サイクルごとに生え変わり、そのたびに色素形成のために新たなメラニンの補給が必要になる。エール大学の鳥類学者、リチャード・プラム(Richard Prum)によれば、このことから――鳥の放射能汚染地帯における生息や通過の有無にかかわりなく――色素変異が極めて定期的に起こる可能性が浮上する。

プラムは鳥類の羽毛配色進化を研究しており、「これは車の修繕に少し似ています。問題は明瞭なのですが、可動部品が多いのです。白色羽毛など――メラニン関連のストレスは、多様な環境のもとで、これと同じように発現し、その背後にある原因は非常に多様なのかもしれません。この冬にも、わたしの自宅の給餌器に異常な白い色素沈着のある4種の鳥が来たのを見ましたが、わたしはニューヘブン*の放射線レベルをさほど心配しておりません」と語った。
  * [エール大学所在地。コネチカット州南部の港町]



イノシシはチェルノブイリ立入禁止区域に勢力を誇っていると見受けられ、隅に置けない。(VASILY FEDOSENKO/Reuters/Corbis

プラムはチェルノブイリの生態系はすこぶる好調であると聞いていると述べており、これはムソー批判派が擁護する見解である。スミスはかつて英国のポーツマス大学で、主として水生無脊椎動物を研究し、チェルノブイリ事故のあと、いくつかの最も汚染された湖で生物多様性レベルが上昇したのをじっさいに観察した。

「たくさんの文献を読みこんでも、事故後短期間の高線量による早期の影響ともっと低い残存線量による晩期の影響を区別することは困難です。しかも、文献の一部は人間の退場が生態系にもたらす影響を適切に説明していません」と、スミスは語る。

かつて2000年、テキサス工科大学のロバート・ベイカーとロン・チェサー(Ron Chesser)は、チェルノブイリを事故以来の人間不在*のおかげで成立した野生生物保護区とみなす論文を発表した。彼ら科学者の両氏とも、チェルノブイリとフクシマにおける生物多様性と種個体群の豊かさは、長期的に見れば、放射線の悪影響を受けないと断言した。

* How The Fukushima Exclusion Zone Shows Us What Comes After The Anthropocene


チェサーは、「最善の努力を尽くしても、事故後の野外研究は明確な全体像を提示できるほどにはじゅうぶんではありません。事故前のデータを扱って研究しているのではありませんので、良質のコントロール群(比較対照区)を提示できないのです」という。チェサーは、ムソーが観察した類いの生理異常を慢性的な放射線被曝の最終的な結果ではないのではとほのめかす。それよりむしろ、それらの異常は、生殖、感染や疾患の免疫反応、渡りのような激しい身体運動など、他の酸化ストレス原因を反映している。

「わたしが親しみながら成長し、これまでの60年間も読みこんできた、すべての[文献]証拠が、(ムソーの知見は)たぶん間違っているとわたしに告げています」と、チェサーは日本における鳥の減少の背後にある原因を放射能とする説に反論する理由を説明していう。「わたしには他人さまを中傷するつもりはないですが、証拠がほんとうに標準から外れていれば、それを裏付けするなにか異常なデータを掴んでいるはずです」

ムソーは、自分の研究手法が、動物個体のガイガー計数器読み取り値にもとづく放射線反応測定を典型的な生業としてきた「守旧学派・放射線生物学者たち」のそれからは逸脱していることを承知している。ムソーが自分は気にしないというように、厳密な放射線レベルに無頓着であれば、だれかの逆鱗を収めさせることはよくわかる。

「わたしたちは生態学的および進化論的反応の計測に厳密に動機づけられています。わたしたちの常軌を逸した証拠は、こうした個体数調査、景観規模全域にわたり、両側地点[研究対象区と比較対照区]を含んで大規模に複製した生体目録を反映しており、この手法は彼ら他の研究団体のどれも、いかなる厳密な形であれ、実行したことのないものです」と、ムソーはいう。

「データは無作為抽出したものではなく、現実的であり、厳密です。それは空間と時間を写しとったものです。データをどのように解釈するかは把握力にかかっており、このような減少にともなうメカニズムをさらに適正に評価するためには、もっと多くの実験を実施する必要があります」と、彼はつづけていう。ムソーの研究チームの側としては、次の目標として、彼らのデータにある異なった鳥類種がさまざまなレベルの放射線感受性を示すように見受ける理由を解明したいと願っている。彼らは来週、チェルノブイリに向かい、7月にフクシマに戻る。


【姉妹記事】

2015524日日曜日

【関係論文】

2015518日月曜日
(末尾にT・ムソー関連記事と【論文】日本語訳稿のリンク集)

【解説記事】

2015422日水曜日