2017年5月16日火曜日

@SafecastJapan【ブログ】浪江町・十万山の森林火災



浪江町・十万山の森林火災

201752日火曜日


2017512日更新】浪江町は、「十万山火災が510155分に鎮火となりました」と広報した[「お知らせ」削除済み]。町の職員がわれわれの電話に応えて、50ヘクタールが全焼したと述べた。住宅地の放射線モニタリング・ポストは放射線レベルの上昇を検知しなかったが、毎日新聞[510日付け福島版記事]が、近隣の集落3か所で58日に実施したモニタリングの結果、大気中を浮遊するちりの放射性セシウム137の濃度が約39倍に上がったことが判明したと報じた。その3か所のデータは次のとおり――

▽浪江町井手のやすらぎ荘(十万山から約2㎞):空中浮遊Cs1371立方メートルあたり3.59ミリベクレルで3.23倍上昇、
▽双葉町の石熊公民館:同7.63ミリベクレルで8.98倍、
▽大熊町の野上一区集会所が同1.35ミリベクレルで3.86倍。

201752日更新】浪江町の立入禁止区域における山林火災は429日から燃えつづけており、現在で4日目になる。この事件は数多く報道され、そのニュース価値がばらついており、われわれとしては、状況を入り念に追っかけるつもりである。

火災現場は、フクシマ核惨事によって最高レベルの汚染をこうむった「帰還困難」区域にスッポリ収まっている。このリンクをクリックすれば、ニュース・ヴィデオとGoogle Earthで地勢を見比べて作成したSafecastオンライン地図の中心に十万山の火災現場を見つけることができる。

現在までの報道を概観すれば、次のとおり――

――火災は、福島第一核発電所から約10キロ、十万山と呼ばれる浪江町の山地で発生している。火炎による危険は福島第一核発電所におよんでいない。

――火災は、落雷が原因で、429日土曜日に発火したと推測される。

――消防隊がヘリコプターで火災に散水し、430日の朝にはおおむね鎮圧したが、強風のために短時間で火勢が盛り返す。

――焼失・延焼面積が拡大しつづけ、52日時点で約20ヘクタールになった。

――われわれは風向に関する情報をあまり入手しておらず、風向きはまちまちだが、卓越風が煙を東方に向かって(概して福島第一核発電所および大熊・双葉両町越しに)海に運ぶはずである。

――われわれが現在までに閲覧した報道のなかで最も参考になったものは、51日付け福島中央テレビ・ニュース[リンク切れ]である。東京大学出身の難波健二教授[福島大学・環境システムマネジメント専攻]が、火災によって、樹木の放射性セシウムが煙や灰に乗って拡散することが予想され、これはこれまで多くの有識者らが唱えてきた一般的なリスクであると指摘している。彼はまた、火災が発生してから、火災現場から南西方向に15キロ、富岡駅のモニタリング・ポストが、ごくわずかながら放射線レベルの上昇を示しているとも指摘している。 われわれは、この種の表示値の意味を考える前に、もっと多くの地点のデータを検証すべきだと信じている。


火災現場から最短距離の地域にある、われわれのPointcast固定検知器は、火災現場から北東方向に約7.8キロ、浪江に設置されている。過去30日間の放射線値変化を示す時系列グラフは、このリンクで閲覧できる。

われわれはまた、近隣の富岡町と南相馬市小高区にもPointcast検知器を設置している。目下のところ、これら2か所やその他の箇所のPointcast検知器にも、特記すべき放射線レベルの変化は示されていない。

政府[原子力規制委員会所管]の放射線モニタリング・ポストの測定値を検討すると、51日前後にいくつかの設置箇所で顕著な「突出」と思える動きが判別できる。しかし、この動きは大きな上昇ではなく、概して、ここ数か月に見受けられた変動の範囲内に収まっているようである。しかしながら、いかなる検出値もすべて、煙のプルームを吹き流す風の方向しだいである。

今のところ、放射線量率の上昇はすべてごくわずかなようだが、この火災による煙を吸引すれば、放射性セシウムの内部被曝をこうむりかねない。われわれとしては、この煙の吸引を避けることを人びとに強く勧告したい。そのようなリスクが最大である火災現場周辺の地域は、一般人に対して実質的に閉ざされており、したがって接近できないが、消防隊員に余分な放射線リスクがおよぶことになるので、消火活動のために適任の人員を送り込むことが難しくなっている。

ニュース映像[リンク切れ]――
2017330日付けNHKニュース
201752日付け日本テレビ・ニュース

われわれは、さらに情報が入手できしだい、この記事を更新するつもりである。

【筆者】

AZBY BROWN
アズビー・ブラウンは、Safecastリポートの主任研究員、主筆。デザイン、建築、環境の分野で多くの著作が出版された権威者であり、日本に30年あまり在住し、2003年にthe KIT FutureDesign Institute[金沢工業大学未来デザイン研究所]を創立。2011年中ごろ、Safecastに参加し、同グループを代表して数多くの国際専門家会議に出席している。

【クレジット】

Safecast, “MOUNT JUMAN FOREST FIRE IN NAMIE” by Azby Brown, posted on Tuesday May 2nd, 2017 at;

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