2016年12月22日木曜日

英紙インディペンデント【ニュース】国連、核発電所はサイバー攻撃に無防備と警告



国連、核発電所はサイバー攻撃の「悪夢のシナリオ」に無防備と警告

有識者らは、テロ集団が攻撃を企んで新技術を用いる事態の「フクシマ型」惨事を恐れている

ベン・ケンティッシュ Ben Kentish @BenKentish 
20161217日(土曜日)

  核発電所に対する攻撃はこれまでにも、未遂ながら何件かあった。

国連事務次長は、テロ集団がサイバー攻撃によって核発電所から放射性物質を放出させる「悪夢のシナリオ」を企んでいると警告した。

ヤン・エリアソン事務次長は、国連安全保障理事会で「悪意のある非国家集団」が大量破壊兵器を入手するように尽力していると発言し、「このような兵器はますます入手しやすくなっている」と警告した。

彼は、核発電所に対するハッキング攻撃は「悪夢のシナリオ」になるだろうと言い添えた。

ISIS、アルカイダなど、テロ集団が大量破壊兵器の獲得を企んでいることは周知の事実であり、今年のはじめ、ベルギーに潜伏するISIS工作員が核発電所勤務の科学者を追跡し、施設侵入をねらっていたことが報じられた。

3D印刷などの技術が進歩し、ドローンの使用が拡大して、サイバー攻撃が可能になり、テロ集団が死の武器を入手することが潜在的に容易になっている。

「非国家集団の大量破壊兵器による攻撃の阻止は、長期的な対応を要する長期的な課題になるだろう」と、エリアソン氏は述べた。

その国連会合は、過激派集団による核・化学・生物兵器の入手を阻止する方法について集中的に論じあった。その会合は、テロ集団による大量破壊兵器の入手または使用を阻止するための諸国の施策を監視する安全保障理事会の役割を強化する決議を採択して閉会した。

チャタム・ハウス[王立国際問題研究所]の研究部長、パトリシア・ルイス博士は、核発電所に対するサイバー攻撃は「現実的なリスク」であると本紙インディペンデントに語った。

彼女は次のように語った――「システムは守られているという考えがあります…そして、それは神話なのです。すべてのシステムには弱点があります。SFめいて聞こえますが、深刻なことにSFではない現実にわたしたちは迷い込んでいます」。

彼女はこう言い添えた――「これは想像の産物ではありません。すでに進行中の事態なのです」。

英国の新規核発電所



サマセット州、ヒンクリー・ポイント核発電所と全英配電網を結ぶ送電線。Getty Images



サフォーク近郊、サイズウェルB核発電所。Reuters


イングランド北西部、ヘイシャム核発電所。Getty Images



アングルシー島クマイスの集落に近いウィルファ核発電所。Getty Images


これまでに数件の核発電所攻撃が実行されている。2009年には、イランの核施設に対する攻撃が核濃縮計画に打撃を与えたと報じられている。

韓国とドイツの施設もまた、サイバー攻撃の標的になった。

これらの攻撃は比較的に小規模だったものの、大規模な攻撃であれば、大惨事になりかねなかった。

ルイス博士は、最悪事例のサイバー攻撃であったなら、「フクシマ型のシナリオ」になりかねなかったと――津波被災後に3基の反応炉がメルトダウンに陥った日本の核発電所を引き合いに出して――警告した。

彼女は、「たぶん非国家武装集団の能力を超えているでしょうが、国家であれば、実行は十分可能です。電力各社はまだ理解していませんが、その脅威をもっと理解する必要があります。わたしたちが完全には理解していない事態が進行しています」と語った。

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コンピュータ・システム防衛のための先制攻撃は秘密指針にもとづいて発動される。



英国下院の国防委員会は、英国の安全保障に対するサイバー攻撃の脅威は「ほぼ想像を絶する速度」で進化する能力を有していると述べた。PA Wire

有識者らは、核発電所を標的にした攻撃が核兵器施設にエスカレートしかねないと恐れている。

ルイス博士は、「核兵器となると、影響ははるかに甚大です。可能性は低いとしても、リスクは巨大です」という。

核発電所攻撃は、放射能漏れによる即時的な危険だけでなく、それがエネルギー供給網の分断をねらったものであるかもしれず、そうなれば経済的大混乱を招き、社会秩序が乱れかねないので脅威になると、彼女はつづけた。

核発電所に対するサイバー攻撃が別の形を取ることもありうる。施設稼働状況のデータや施設要員の個人情報を取得することをねらうものもあるし、他にも、ハッカーに金を払わないと攻撃するぞと企業を恐喝する「身代金目的の攻撃」もある。

ハッキングによって、核反応炉の配置と構造に関する秘密情報を盗み出し、潜在的に施設内部の関係者を巻き込んだり、ドローンを使ったりして、物理的に攻撃する計画の立案に役立てることもできる。ドローンは以前にも各地の核発電所の上空を飛んでいるのが目撃されており、その所属と操縦人物は謎のままである。

サイバー攻撃がますます頻繁に起こっているので、一部の有識者らはハッキングの成功は避けられないと結論づけて、各企業はハッキングされたときに被害を封じ込めるための計画を策定するためにもっと注力すべきであると主張している。

ルイス博士は、「わたしたちは、これまでとは違った――攻撃に対して完璧な防衛が可能だと想定しない――タイプのサイバー安全保障手法を必要としています」と語った。

「わたしたちがやろうとしているのは、攻撃を想定して、復元力を組み込んで、攻撃されたときに現実的に大した影響を受けないようにする…そのような文化を導入することです」と、彼女はいう。

チャタム・ハウスの核兵器専門家、バイザ・ウナルは、問題のひとつとして、民間のエネルギー企業が、サイバー攻撃の詳細の共有を図れば、営業と世評の面で傷つくと恐れて、自社に対する攻撃について沈黙してしまい、共同防衛策の開発が困難になっていると語った。


【クレジット】

The Independent, “Nuclear power plants vulnerable to hacking attack in 'nightmare scenario', UN warns,” by Ben Kentish, posted on Saturday 17 December 2016 at;




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