2016年9月2日金曜日

ネーション誌【世界の潮流】ブラジルのルセフ大統領弾劾は右派勢力のクーデター







国際法廷はブラジルのジルマ・ルセフに対する弾劾を非合法的なクーデターと宣告する
弾劾の理由には根拠がなく、弾劾を推進する立法議員の大方は、彼ら自身が重大犯罪で告訴されている。

アザデ・シャシャハニ  Azadeh Shahshahani @ashahshahani
2016826

ブラジルの首都ブラジリアにて2016824日、職務停止中のジルマ・ルセフ大統領を支持する集会のさい、ポルトガル語で「テメルは出て行け。クーデターにNO」と記されたチラシを掲げる女性。 (AP Photo / Eraldo Peres)

【編集者注】ブラジルの議会上院は831日、6120の票決で、ルセフに連邦予算操作の罪を宣告し、13年間にわたった労働党政権に終止符を打ち、ミシェル・テメル暫定大統領が現政権の任期が終わる2018年まで大統領職にとどまる舞台を整えた。

筆者は、719日と20日、リオデジャネイロで開催された「ブラジルのデモクラシーのための国際法廷」の陪審員を務めた。この法廷は、1960年代に米国の対外政策とヴェトナムに対する軍事介入を審理し、やはり国際戦争犯罪法廷として知られるラッセル法廷にならったものだった。

この法廷を組織したのは、ヴィア・カンペシーナ・インターナショナル(国際小農運動)、ブラジル人民戦線、ブラジル法律家民主主義戦線であり、土地なし労働者運動(MST)など、いくつかの学術組織と草の根団体が支持していた。

ブラジルの社会運動団体のいう「民主的手続きの中断」および「新しいタイプのクーデター」を分析し、判決を下すために、筆者、その他8名の陪審員がヨーロッパとラテンアメリカの国ぐにから招かれた。

法廷は、ブラジルの下院議会が採択したジルマ・ルセフ大統領弾劾の検証を付託された。今年の4月、反ルセフ勢力が弾劾手続きの開始に要する単純多数票を確保したさい、各議員は弾劾に賛成または反対の票を投じる理由を述べることを求められた。果たして、ルセフを弾劾するに足る「罪」の理由を提示できた弾劾賛成議員はほとんどいなかった。

上院は先日、弾劾手続きをすすめる案を票決した。上院は今後数日中に、ルセフを罷免し、2018年の大統領選挙までミシェル・テメル前副大統領を大統領職に据える事案の最終票決をおこなうことになっている。

弾劾の公的な理由――ルセフは政府事業の資金繰り不足分を補填するために連邦銀行から資金を不適切の移動をおこなったという申し立て(資金全額は連邦銀行に償還されている)――は、過去の歴代ブラジル大統領がおこなってきたことで、犯罪にはあたらない。ルセフは私的な蓄財を告発されていないし、ブラジルに蔓延する政治腐敗で汚れていると批判されてもいない。

弾劾の要件として、大統領による犯罪関与を議論の余地なく示す証拠を要するはずだ。憲法の文言から明白であるように、弾劾に値する不法行為とは、重大なものであり、また憲法の枠組み、ひいてはブラジル国家に直接かかわる法的利益を損なうように意図的に犯されたものである。適用されている法律は、弾劾要件としての犯罪に予算の会計ミスや資金不足をあげていない。

検察庁は最近、ルセフはいかなる犯罪についても無罪であることが判明したと報告している。それにひきかえ、クーデター賛成派議員の多くは政治腐敗の嫌疑で起訴されており、その累は下院議員の約60パーセントにおよんでいる。たとえば、テメルご御大が、ブラジルの石油大手、ペトロブラスと取引のある建設会社から賄賂150万リアル(4755万円)を受領した嫌疑で告発されている。漏洩された一連の電話盗聴記録によってもまた、ルセフの主だった政敵の一部が最高裁判所と共謀し、彼女の失脚と腐敗捜査の差し止めを図ったことが暴露されている。

法廷審理において、双方の証人が何人か召喚された。証人になったマルシア・ティブリ教授は、さまざまな性差別表現など、ルセフに対する女性嫌悪丸出しの攻撃について陳述し、ルセフが左翼ゲリラだった1970年代、軍事独裁政権に捕縛され、拷問されたとき、立法府の右翼議員たちは彼女がこうむったレイプを黙認していたと証言した。

もうひとりの証人は、弾劾の成立を許容するようであれば、テメルと彼の全員が白人男性の内閣は、ルセフと彼女の労働党が主導してきた社会保障事業の削減に向けて早急に動いているので、ブラジルの労働者階級にとって悲惨なことになるだろうと証言した。

われわれに提示されている広範な証拠にもとづき、ブラジルで進行している事態はデモクラシーに対する謀略であることがわかる。民主的に選出された左翼の大統領を退職させるという党派的な目的のために、弾劾が用いられている。これは実質的にクーデターであり、これを仕組んだ人物たちは重大な腐敗と深刻な犯罪によって有罪であって、責任を問われなければならない。

われわれ国際陪審員団はまた、満場一致して、ルセフの大統領職剥奪が「民主的手続きの原則およびブラジルの憲法秩序のすべてを侵犯する」と判断した。

このクーデターは、ブラジルのエリート層が選挙によらない手段で権力を奪還し、ネオリベラル政策を再実施する企てである。ある証人が思い起こさせたように、民主的に選ばれた大統領が任期をまっとうできるか否かは、議会多数派が彼女の与党であるか否かに左右されるべきではない。

米国政府のクーデターに対する立場は、実質的にそれを支持しており、やはり批判されなければならない。これは、民主的に選ばれた政権が米国政府の利益に反する行動をする場合、同じように手続きにもとづくクーデターでその政権を打倒したさい、米国がパラグアイホンジュラスに対してとった姿勢でも同じである。

クーデター後のホンジュラスで、体制が軍国主義的に野蛮になり、多くの人びとが命を守るために逃げ、米国に避難場所を求めたのであり、世界はその事態を目撃した。ベルタ・カセレスなど、数人の活動家が殺害された。

筆者は2013年にカセレスに面会しており、その時ですら、彼女は地下生活をしていて、彼女の業績のために暗殺リストに掲載されていた。この先住民・環境権運動活動家は政権と同盟した勢力に殺害され、下手人の少なくともひとりは訓練された米国特殊部隊員だった。それ以降も、彼女のグループの他の何人かが殺害されている。

2013年の選挙のさい、われわれの派遣団は大掛かりな不正行為と脅迫行為を記録した。米国大使はそのような行為を「民主主義のお祭り」と呼んだ。

ブラジルの法廷で何度か言及されたように、その国のクーデターの衝撃は同国内に限定されず、ラテンアメリカ全域に、またその領域の彼方にまで反響することだろう。このクーデターは、打倒されなければならない。われわれは米国人として、わが国の選良たちに対して、この決定的な時期における彼らの姿勢と行動の説明責任を問わなければならない。

【クレジット】

The Nation, “An International Tribunal Declares the Impeachment of Brazil’s Dilma Rousseff an Illegitimate Coup,” by Azadeh Shahshahani, posted on August 26 at;

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