2015年6月17日水曜日

グリーンピースが読み解くIAEAフクシマ報告【はじめに】


*** 目次 ***

はじめに




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投稿日 - 2015-05-28 19:18

グリーンピースは、IAEA(国際原子力機関)が作成した未公表の福島第一原発事故レポート(以下、レポート)要約を入手し、本日ウェブサイトにて公開した。
(以下がその原文、5つに分割して掲載)

*** 以下はグリーンピースによるIAEAフクシマ報告に対する批判的分析である ***  



2015/05/28

福島第一原子力発電所事故に関するIAEA報告概要:
予備的な分析
A preliminary analysis

ジャン・ヴァン・プタ Jan Vande Putte
ケンドラ・ウルリック Kendra Ulrich
ショーン・バーニー Shaun Burnie

「日本は事故を受けて、規制体制を国際標準に適合するように刷新いたしました。日本は規制機関に明確な責任と大きな権限を付与したのであります…わたしは、福島第一原子力発電所事故の遺産が世界の原子力安全性に関して明敏な関心の核になると確信しております。わたしは、わたしが訪問したすべての原子力発電所で安全対策と手続きの改善を目撃しております」
――天野之弥、IAEA事務局長
『福島第一原子力発電所事故に関する報告』2015年版

事務局長による
福島第一原子力発電所事故に関するIAEA報告概要

グリーンピースによる
要録

「事故の原因と結果、ならびに教訓に対する、事実に準拠し、偏りのない、権威ある評価」――IAEA事務局長

グリーンピースはIAEA福島第一原子力発電所事故報告を査読した結果、この報告が事務局長の大望の成就に成功していないという基本的な結論を得た。この報告は、不確実だったり未知のままだったりする内容を事実として提示し、決定的な証拠を無視しており、偏りがないとはまったく考えられない。

放射能と健康――主筆、ジャン・ヴァン・プタ

§   IAEAは、「福島第一原子力発電所事故の原因関係の定量化と特性評価が困難であると判明した」と確認している。

§   IAEAは、福島被災民の放射線量推計に高度な不確実さがともなうと確認している。不確実性の基本的な理由のひとつは、事故の初期段階において、放射線監視システムが適切に機能していなかったことである。

§   IAEA報告は、人の健康に対する識別しうる放射線関連の影響はないと述べており、住民に対する推定線量値が不明であっても、推計集団線量値が重要なので、この点で欠陥がある。数千人規模の人びとの健康に対する影響は、放射線防護が放射線被曝量を数値化し、規制限度を設定する基礎になる線型・閾値なし(LNT)モデルにもとづいて予測すべきである。

§   IAEAは「当事者の関与」の重要性を認めているものの、2014年に避難指示が解除された田村市(都路地区)や川内村、近く解除される飯舘村におけるように、日本政府の意図的な方針の結果、住民が汚染地に帰還することを首尾よく強いられている福島県の現実を無視している。

環境に対する影響――主筆、ケンドラ・ウルリック

§   IAEAの福島報告は福島第一原子力発電所核惨事による陸地の放射能汚染の規模、範囲、複雑さにまったく言及しておらず、証拠もなしに人外生物相に対する影響を無視している。

§   IAEAは、反応炉から北西方向の放射性セシウムの堆積レベルが極めて高く、地域によって1,000,000 Bq/m2から10,000,000 Bq/m2の堆積量が記録されているという1IAEAがいう福島県全域のセシウム137の平均蓄積濃度は100,000 Bq/m2である2。これはIAEA自体が汚染地の判定に用いる基準である40,000 Bq/m2を大幅に超過しており、驚くべき数値である。
1 Fukushima Daiichi Accident, Summary Report by the Director General, Board of Governors; May 14 2015, IAEA 2015, pg. 131
2 IAEA Fukushima Report, pg. 131

§   IAEA福島報告による環境に対する放射線の影響の皮相的な否定とは対照的に、放射線の影響を実地に調査している科学者たちは放射線被曝による動物の生態に対する測定可能な影響があると結論している。

安全性リスク分析の欠陥――主筆、ショーン・バーニー

§   IAEAは福島第一原子力発電所事故の原子力安全責任を正確に反映する基本的分野で欠陥があり、いま原子力規制庁が管轄する日本の原子力規制が世界最高水準の標準に迫っていることを示す証拠を提示していない。

§   地震が福島第一原子力発電所の重要危機と反応炉内部の配管に影響を与えた証拠があり、その事故との関連がまだ検証されていないにもかかわらず、IAEA福島報告は未知である部分と不確実な部分を認識していない。IAEAは信じられないことに、「日本の原子力発電所は耐震設計と建設において慎重な手法を採用しており、その結果、施設が適切な安全余裕度を具備することになった」と記述している。

§   IAEAは正当にも東京電力(TEPCO)と2011年当時の福島第一原子力発電所を監督していた原子力安全・保安院(NISA)の両者に対して批判的でありながら、日本における新しい耐震規制要件の目下の欠陥とその誤った適用になんら言及していない。

§   原子力規制庁(NRA)は脆弱な核規制を警告されているにもかかわらず、IAEAの勧告を含め、国際慣行に従っていない。原子力発電所、とりわけ川内原発の核反応炉を再稼働する計画に対するNRAの審査は、フクシマ後の規制に対する違反を是認しており、その結果、原発の安全性に不可欠である耐震基準の不備を承認している。

詳細情報の問い合わせ先:

ジャン・ヴァン・プタ――グリーンピース・ベルギー
Jan Vande Putte – Greenpeace Belgium - jan.vande.putte@greenpeace.org
ケンドラ・ウルリック――グリーンピース日本
Kendra Ulrich – Greenpeace Japan - kendra.ulrich@greenpeace.org
ショーン・バーニー――グリーンピース・ドイツ
Shaun Burnie – Greenpeace Germany - sburnie@greenpeace.org

はじめに

グリーンピースは、国際原子力機関(IAEA)が編纂し、68日から12日まで開催されるIAEA理事会会合で議論されることになっている福島第一原子力発電所事故に関する報告の概要を査読する機会を設けた。IAEA報告の完全版は、20159月にウィーンで開催される年次会合の加盟国総会に提出されることになっている。

238ページから成る報告書の一部に対する、この予備的な分析は次の3点に焦点を絞っている――


グリーンピースはこれからの当面、IAEAフクシマ報告に対する追加的な分析を実施していくつもりである。


*** 本稿の構成 ****

はじめに


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