2014年11月18日火曜日

星条旗紙「過小評価される福島の健康リスクと原発再稼働を急ぐ動き」(アル・ジャジーラ記事の転載)


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過小評価される福島の健康リスクと原発再稼働を急ぐ動き
Study: Fukushima health risks underestimated
2011329日、福島県で空軍放射線評価班軍人の放射線レベルを検査する空軍放射線評価班要員、ケヴィン・リヴェラ二等軍曹。311日の地震および津波が福島第一原子力発電所を壊滅させたあと、日本中の数百か所で放射能および毒物試料を収集した。U.S. AIR FORCE

ジョン・ボイド John Boyd 
アル・ジャジーラ Al Jazeera (MCT)
20141116
【東京】20113月の地震と津波のあと、メルトダウンに見舞われた福島第一原発の近くにおける最近のグリーンピース放射線モニタリング活動の調査結果によれば、放射能「ホットスポット」がいまだに福島県各地を汚染している。
環境団体の専門家らはまた、当局者らが一貫して放射能汚染量とそれに関連する健康リスクを過小評価してきたと主張する。
グリーンピースはこれらの調査結果を用いて、原子力発電所が立地する地方自治体を説得して、政府による原発の再稼働に向けた働きかけに抵抗してもらうつもりである。2011年の災害のあと、日本に残った原発50機のすべてが停止したままである。
グリーンピースは核事故後の数日以内に福島における放射線モニタリングを独自に開始し、その後毎年、現地調査旅行を実施してきた。その旅行の最近のものは、1024日から27日にかけて行われた。
グリーンピースの活動家であり、放射線モニタリング活動に参加する核物理学者、ハインツ・シュミタル氏は、東京で1030日に行われた記者会見で外国人ジャーナリスたちに、災害現場から60キロも遠く離れた場所でも放射能ホットスポットが存在すると語った。
たとえば、福島市内のとある病院前の街路が、1時間あたり1.1マイクロシーベルトの放射線が測定され、「ひどく汚染されている」とシュミタル氏はいった。これは最高値の部類になるが、グリーンピースは他にも、環境省が長期目標に定める1時間あたり0.23マイクロシーベルトを超える放射線量なる場所が市内に70か所あるのを見つけた。
シーベルトは、体が吸収する放射線のリスクを測定する単位である。1ミリシーベルは11,000シーベルトに等しく、1マイクロシーベルトは1100万シーベルトに等しい。典型的なCTスキャンはスキャンする部位によって、2ないし10ミリシーベルトの放射線を照射する。
放射能「ホットスポット」
グリーンピースはまた、福島第一原発周辺の20キロ圏立入禁止区域で、政府が避難勧告を解除した最初の2地域、都路地区(田村市)と川内村の汚染もモニターした。
グリーンピースはそれでもやはり、これらの地域内の道路上で1時間あたり0.23マイクロシーベルト目標を超える地点をおびただしく見つけた。
「それに、道路を離れ、野原や周辺の森に入れば、放射線レベルは強烈に上昇します」と、やはり福島モニタリング活動に参加したグリーンピースの放射線安全アドバイザー、ヤン・ヴァンダ・プタ氏はいう。したがって、これらの地域は「除染されていませんし、たとえば、現実的にいって、森林は除染できませんので、除染できないでしょう」と、彼は付け加えた。
日本の環境省は、環境省が放射能汚染とそのリスクを過小評価しているというグリーンピースの主張に反論している。環境省は、原子力規制委員会が201312月に実施した最新の航空機モニタリング調査が示しているように、福島における放射能は時間が経過するにつれ着実に減衰していると指摘する。環境省の広報官は、放射線率が「物理的崩壊、気象作用、そして除染作業のおかげで、福島周辺で(201210月の原子力規制委員会調査時に比べて)顕著に低下しています」とアル・ジャジーラに語った。
しかしながら、批判派は、こうした結果が放射線測定値を平均化することで得られるもので、結果として、グリーンピースが見つけたと主張するような個別の「ホットスポット」について言及されないままになると非難する。
原子炉工学・安全解析の専門家で日本システム安全研究所・代表、吉岡律夫氏は、「今でも平均的な結果より高い(放射線量の)蓄積はありえます。福島の住民は自分たちの地域における放射能の影響がどんなものかを知りたいのです」という。
政府は、そのような検査手段はすでに用意されているという。環境省の広報官は、「2013年末でいえば、個人線量計で測定した個人被曝線量率が(年間)より低かった福島市の住民は93パーセント以上になります」と指摘した。
自然減衰
異なったモニタリング方法とその結果を扱うには、遠近感を維持することが重要であると、セーフキャストのメンバー、アズビー・ブラウン氏はアル・ジャジーラに語った。セーフキャストは、放射線技師、ソフトウェアとハードウェアのデザイナー、大学教授などのボランティアが結成した無党派で独立した放射線モニタリング集団である。
訳注:SAFECAST(日本語サイト)
「そのとおり、福島市でもどこでも、いまだに1時間あたり0.23マイクロシーベルト以上の場所を見つけるのは簡単です。しかし、考えられる事例のほとんどすべてで、現時点において年間1ミリシーベルトの被曝線量になる場所を除染する作業を何もしなくても、30年後には自然放射性崩壊のおかげで年間0.5ミリシーベルトかそれ以下になります」と、ブラウン氏はいった。
ブラウン氏はその反面、福島の住民には当然の不満があると認める――「両サイドの専門家たちが、致命的な癌のリスクが増大するにしても、少数の例外を除いて、生涯に1パーセント以下程度、増えるだけだと教えてくれても、これがポイントではありません。要は、このリスクを押し付けられる理不尽であり、事故が招いたゴタゴタであり、これが問題なのです」。
グリーンピースは原子力の廃絶を願い、即座に調査結果を鹿児島県庁に提出した。鹿児島は九州南部に位置し、川内原子力発電所の立地県である。
川内原発の原子炉2基は9月に戦闘準備万端整え、厳格な新安全基準に合格したあと、原子力安全委員会によって、国内で最初に操業しても安全であると宣言された。その結果、鹿児島は一方では政府による働きかけ、また他方ではグリーンピースのように、それに反対する団体による働きかけの焦点になった。
政府は川内原発とその他の原発を再稼働させ、高価な天然ガスと石油の輸入量を削減し、国のエネルギー・ミックスを多様化したいと欲している。だが、反核グループは福島で起こったことを言い立て、リスクが受け容れられないほど高いという。
鹿児島県議会は議題を討論したあと、九州電力株式会社が操業する原発の再稼働を117日に評決した。イエスの票決は、原発が立地する薩摩川内市の議会による1週間前の同じような決定の木霊(こだま)さながらだった。
伊藤祐一郎鹿児島県知事は、彼の決定後の記者会見で、諸般の状況を総合的に勘案し、資源が限られた日本で産業生活の活性化を図るために、「原発に再稼働はやむを得ない」と述べた
日本の公共ラジオ・TV放送局、NHK1031日から113日にかけて、この問題に関する電話世論調査を実施した。薩摩川内市において、49パーセントが賛成、44パーセントが反対だった。しかし、周辺地域では、34パーセントが賛成、58パーセントが反対だった。日本全国の世論調査値でいえば、賛成32パーセントに対して反対57パーセントになる。
安全解析専門家、吉岡律夫氏は、それぞれの地域で原発の再稼働に反対しているグループが結束すれば、自分たちの問題をもっと強く論じたてることができるようになるだろうといった。函館市では、市議会が23キロ離れた他県の大間原発の新規建設の差し止めを申し立てる訴訟を4月に起こしたと吉岡氏は述べた。
日本に48基ある他の原子炉の事業会社もまた自社原発の再稼働をめざして奮闘しているので、明らかに戦いは始まったばかりである。
©2014 Al Jazeera (Doha, Qatar)
【参考記事】
フクシマの原発事故から2年、ドイツのグリーンピースが新たに放射能測定を行った。線量はまだとても高い。核物理学者のハインツ・シュミタル氏がドイッチェ・ヴェレとのインタビューに応じ、福島近辺での危険での生活がいかに危険か、語った。
シュミタルさん、先日福島とその近辺で放射能測定をなさいましたが、どのような結果に達しましたか?
シュミタル:放射能は今もまだとても高いです。福島市には約30万人の住民がいますが、ここには子供たちが遊ぶ公園でもまだ強く汚染されているものがあります。測定値は地面で測ると、原発事故前の200倍です。住民が揃って避難したゴーストタウンで、かなり大がかりに除染作業が行われましたが、そこでは放射線量が下がっていないことを私たちは確かめました。放射線はしっかり地面に入り込んでいるのです。除染作業で20%から50%はよくなったかもしれませんが、それでも線量は高く、とても人が普通に住めるような状況ではありません。


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