2013年12月4日水曜日

@JapanFocus フクシマ:「いのち」と国境を越える放射能汚染 #アジア太平洋ジャーナル

アジア太平洋ジャーナル:ジャパン・フォーカス
アジア太平洋…そして世界を形成する諸勢力の批判的深層分析

The Asia-Pacific Journal, Vol. 11, Issue 41, No. 3, 20131014
フクシマ:「いのち」と国境を越える放射能汚染1 
アダム・ブロイノスキー Adam Broinowski
福島第1原子力発電所が、地震か津波、あるいはその両者が複合して原因になったのか、いずれにしても機能不全に陥ったとき、放射性汚染物質が放出されただけでなく、人びとの暮らしが原発と切り離しがたく結びついていることがあらわになった。
その時から2年半以上にわたり、1945年からこのかた日本を支配してきた主権構造の中心に巣食う腐敗、無能、虚偽がますます目に見えるようになってきた。本稿では先ず、この構造の基盤を提示し、日本政府と民間の大手電力事業者の長年にわたる関係が現在の危機を特徴づけている様相を究明し、とりわけ、この現在の構造の内部の個人的レベルでなされ、人の健康に作用をおよぼしてきた決定の副産物に言及する。放射能が人の健康におよぼす影響を考察したあと、他の放射能汚染事例――ハンフォード、ヒロシマとナガサキ、チェルノブイリとイラク――における影響に関する視覚的で地域に即した証言に論点を移し、フクシマ核惨事との比較評価を提示する。各地の状況に関して無条件に結論といえる立場に到達するは困難であることに留意しながらも、いまでは、人の健康に対する影響についての現実的な評価に達し、世間の理解が混乱してきたし、いまも混乱したままである様相に気づくことができるほどの証拠が蓄積されている。本稿では最終的に、フクシマ核惨事が汚染の規模と特質において他の放射能汚染事例に抜きん出ていることに鑑み、これまで20世紀中期の力関係で規定されてきた現在の法定基準と体制的な対応の抜本的な変革が求められていると主張する。

Ⅰ 主権の優先順位
70年近くにわたる「戦後体制」において、原子力は着実に日本の政治秩序と同義語になり、国際的な体制の枠組に組み込まれてきた。(アイゼンハワーの1953年「平和のための原子力」キャンペーンをきっかけとして)若手政治家らと産業界の大物たちの連合が、広範な地政学的再編過程において、日米二国間の政治・経済関係の緊密化を促進した。1949年以降の財閥・政府連動関係の再構築の一環であり、国家のあらゆる側面(自民党の看板政策である「土建国家」)における不断の建設とエネルギー生産の集中化(または「プルトニウム経済」)に相応した2、「アジア自由陣営」の成功した民主国家という価値観のもと、自然環境の破壊は、経済成長の最適化を図り、政治的緊張を封じこめるための資源精製、生産、建設という不可欠な活動にともなう必要悪とみなされていた。
米国原子力委員会(AEC1954年)、日本原子力委員会(JAEC1956年)の設置につづいて、国際原子力機関(IAEA)が1957年に設立された。その憲章第2条は、「ウラン資源の安全で責任ある開発」の促進を謳い、任務を「全世界における平和、保健及び繁栄に対する原子力の貢献を促進」することとしている。日本が「原子力に平和利用」に全力を傾けていたのと同じように、核クラブの締約諸国はIAEAが世界の核産業を盛りたてる中心的な役割を担うことに同意している。IAEAの専門家らは核物理学に極度に偏重しているにもかかわらず、WHO1959年、IAEAが核放射腺による健康影響を報告する主要な責任を担うことを認めた(WHOWHA12-40」協定、1959528日)。IAEA、その他の放射線防護機関は放射線にかかわる安全・環境防護基準を設定しながら、常に事象や証拠を過小評価し、低線量放射線にかかわる健康不安を「放射能恐怖症」と診断し、それは放射線そのものよりも有害であると決めつけてきた。フクシマ原発で進行中の惨事に対する理解と反応も例外ではない。
日本の原子力は、社会の強力な勢力に支配された産業の雄として、対外政策、国家安全保障、多国間関係に影響をおよぼすようになった。フクシマ核惨事後の最初の2年間、東京電力の役員らが見せつけてきた能天気な自信過剰は、日本電気事業連合会が長きにわたり享受してきた原子力発電技術独占の表れだった。サンフィールド二本松ゴルフ倶楽部が高レベル放射線のために閉鎖を余儀なくされた倍賞を求めて2012年に提訴した事件で、東京電力は、民間事業者として公衆に対する責任が限られており、一旦、福島第1原子力発電所から放出された放射性物質の所有者ではないと主張した。同社は、その物質が「無主物」――つまり、霧や魚のように何者にも属さない物――であり、それが舞い降りた土地の所有者の所有物になると言い張ったのである。この事件の場合、放射線レベルはチェルノブイリ立ち入り禁止区域のレベルと同等だった(セシウム137235,000ベクレル/kg、ストロンチウム9098ベクレル/kg)。その一方、東京電力側の弁護士らは、自分らは関係ないやという態度もあからさまに、政府による線量測定の技術的な正確さに反証し、10ミリシーベルトの自然放射線が世界の人の居住している場所で見つかっており、健康に対する悪影響もないと、原発推進側にお決まりの主張を用いて彼らの放射線に対する理解を陳述した。地方裁判所は企業が不服申立てをする権利を支持したにもかかわらず、除染責任は地方自治体と政府にあるとして、東京電力がゴルフ場運営会社に賠償する義務を免除した3
東京電力と政府の両者は2008年にリスクの妥当な事前警告を受け取っていたが、惨事のあと1年以上ものあいだ、揃って津波と地震は「予想不可能な自然の力」であり、「想定外だった」といいつづけた。両者は、敷地境界や国境を超えて放出された放射性汚染物質による被害の責任を拒否した。「廃棄物その他の投棄に係わる海洋汚染防止に関する条約(1972年)は責任がおよぶ範囲を船舶から投棄されるものに限定し、陸上排出源を除外しているので、東京電力と日本政府の立場は明らかにこの条約に支持される4。しかしながら、1972年条約締約諸国の1996年合議による議定書は、「予防手段」および「汚染者負担」の原則を成文化している。この議定書はリストに記載する特定の危険物質を禁止するというより、「同リストに記載されていない、いかなるものでも」と明記することにより、条約の規制対象を陸上からの排出される廃棄物をも含むと変えていて、リストには原子炉からの汚染物質は記載されていないが、海中投入処分ができなくなり、陸上で管理しなければならなくなった。予防措置が不完全であり、汚染者が怠慢により汚染物質を適正に保管することを拒む場合、提訴が可能になった。
この意味で、東京電力と政府は横並びで動いてきた。政府が(コストを補填することによって)事業会社を経営破綻と倒産から守るために、(国税と国際支援金を含む)1兆円の恒久政府基金を設置して、事業会社の財務管理権を握る一方5、東京電力の経営陣は原発の所有者として、その運営を継続し、人と環境の健康を含む、各関連の運用上の問題に関する最終的な権限を握るものと想定されている。この立場の根底に潜む重要な職務上の問題点は、東電が浄化作業で負担したコストの償還が約束されていることである。同時に政府としては、得策と考えられる場合、惨事の責任を東電に転嫁できることになる。
東京電力は最も重要な産業を代表する大手企業であり、破綻を看過するには重要すぎるとみなされ、この意味で社会を超越した存在である。エンジニアリング業務上の技術的な問題、健康安全性の限界、放射線検出方法、安全確保手順、財務管理が公論を(にぎ)わしてきた一方、裁判所は、責任性と根本的な原因に関する真剣な考察を中心課題から外したり拒んだりしてきた。一企業としての東京電力にとって、自社の株価と収益性の確保が相変わらず第一優先事項であり、費用/効果分析にもとづいて、事故対策業務を切り詰める結果になった。これが、海上と陸上の不定期で不適切な線量測定、大慌てで組み立てられ、ぞんざいに監視される一次貯蔵施設(ざっと38万トンの高レベル汚染水を保管する1000基以上のタンク)など、いいかげんな安全対策につながった。
しかしながら、東京電力は失敗に失敗を何度も重ねてきたにもかかわらず、そのつど政府に守られ、相変わらずビジネス経営をつづけてきた。同社は「大きすぎて潰せない」とみなされ、冷徹な資本主義論理からも、正当な民主的手続きからも免除されてきたが、その一方、核産業全体の浮揚力を維持する試みの一環として、収益を約束する資産管理を勧奨されている。この意味で、壊れた原発の下にある溶融放射性金属という現実は、投資見込み客側のいかなる信頼喪失も防ぐために「封印」された財務負債の形に抽象化される。ネオリベラルの自由市場原理は、財務上の利益が見込まれる場合の国による介入を許容するが、その他の場合、厳格な経済的必要性に固執する。さらに、この問題は日本に限定されていない。3つの行政当局が事故の当初から、揃って核技術輸出の買い入れ見込み諸国を説得してきた。輸入が決まった国ぐには、ヴェトナム、トルコ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦であり、他にも中欧とアジアの輸入見込み国との交渉がつづけられている6。さらにまた、日立と東芝は国内の閉塞状況を見越して、原発操業を拡大するために、海外(英国)の原発を買収している7
政府は東京電力のような企業体の責任を認定することによって、みずからの説明責任を限定することができるが、企業が扱う物質は、その廃棄物が長期にわたって存在しつづけること、また生物圏に浸透する性格を有することを考えると、その利用によって得られる短期的な経済利得よりも毒性のほうが大きくなる。多国籍産業の一部として東京電力に付与される重要性は、公正取引および国境を超える汚染の排除という核心的な国際原則を踏みにじるものである。現に影響を受けている、または将来に受けようとしている人びとに、適切な事前警告または協議の機会が提供されていないという事実は、政府と企業の両者とも、民間人の権利を守る責任に背を向けていることを意味している。その代わり、企業に至高存在であるかのような特権を与えている。公衆衛生と福祉を犠牲にした、この種の企業助成策は、国と企業経営者らが分かち合う利害関係と国・企業相互間の職域流動性の程度をうかがわせる。1950年代に放射能汚染の危険性と原子力の政治・経済的利益を天秤にかけて定められ、歪んだ規制基準もまた、こうした事情のさらなる一助になっている。
列島が不安定な地震多発帯であるにもかかわらず、日本に54基もの原発が集中投資、調査、計画、建設、操業されてきたのは、事業者、政府、それに協力する国際機関によってであり、これら当事者らは多国籍の「原子力ムラ」と硬直した供給系列を形成しているのであり、このことから、放射線関連の産業と公的機関が損害やコスト超過の負担から守られている理由をうかがい知ることができる。
201394日、安部首相による日本での発言、そして、その3日後、ブエノスアイレスのIOC(国際オリンピック委員会)総会における東京にオリンピックを誘致するための最後の売り込みをかける首相のパフォーマンスには、危機を克服する断固たる決意を誇示する意図がこめられていた。しかしながら、演出と現実の不一致は明確にならなかった。安倍は、国民に対して、次にオリンピック委員会と世界の視聴者に向けて、「(フクシマの)状況は、統御されています。東京には、いかなる悪影響にしろ、これまで及ぼしたことはなく、今後とも、及ぼすことはありません」と断言した。彼は、原発に470億円(5USドル)を投入すると約束するとともに、彼の政府がフクシマ原発からの放射能汚染水の漏出を止めるので、「2020年には、まったく問題ない」と保証した。一方、IOCにおける招致活動のリーダー、竹田恒和は、東京の空気と水の質は安全であると人びとが信じており、東京の生活は「パリ、ロンドン、ニューヨーク」など世界の大都市と同じく正常でありつづけるだろうし、「フクシマ」は「大規模で安全なオリンピック大会」にリスクをおよぼさないと主張した8。汚染水が原発の港湾0.3平方キロ内に封じこめられているという彼らの信念に相反して、電離放射線源は関東平野に撒き散らされ(そして、拡散しつづけ)、さらには海に拡がっていた。
201397日、安倍晋三首相のIOCスピーチ
「健康問題は、今までも現在も将来も、
まったく問題ないとはっきりお約束いたします」
請負業者が「除染」プロジェクトをつづけている一方、冷却水の常時循環とタンクに保管されている汚染水の(フランスの核技術専門会社、アレヴァ〔AREVA〕が提供した先進的液体処理システムを通した)濾過ろかにより、溶融燃料を冷却するという、東電が採用した当初の戦略は、さまざまな問題で絶え間なく支障をきたしている。これはまた、放射性同位元素を完全に除去する能力がないとして、米国原子力規制委員会の前委員長、グレゴリー・ヤツコ、そしてグリーンピースや「社会的責任を果たすための医師団」(PSR)といったグループによる批判の的になってきた9。爆発後、最初の数か月以内にロシアの原子力企業、ロサトム(Rosatom)がゼオライト吸着剤を用いる手法の一回目の提案をし、その後、20138月に再提案したが、おそらく東電はアレヴァとの取り決めをおもんばかったのだろうが、これに肘鉄を食わせた10。しかし、広大な区域の森林地が浄化され、原発敷地内の準備が整わないかぎり、汚染水と汚染土壌の201311月までに利用可能な用地の最大限度に達すると予想されている。東京電力は恒久保管施設を手配する計画を欠いたままの除染法を採用しているので、やがて汚染水を海や大気中に放出することを東京電力がいまだに期待していることをうかがわせる11

Ⅱ 人間の安全の必要性と経済の健全性の相克
政府に寄せる国民の信頼もまた、溶融放射性核燃料からの汚染に対する懸念を超えて、フクシマ惨事の犠牲になってきた。野田政権(201192日~20121226日)は、管政権の国内の原発を閉鎖する計画に対して、ことばを濁したが、201212月に発足した安倍政権は、この計画を決然と破棄した。安倍政権はそれどころか、少なくとも当初段階で、原発の輸出と再稼働、原子力関連の生産の加速化を明言し、経済成長を後押しするための自民党の土建国家方式に復帰し、それを強化した。
2011419日に放射線被曝の安全限度が(年間1ミリシーベルから20ミリシーベルに)後付け的に引き上げられ、また避難区域が原発から30キロ以内の圏内に限定されていたが、これらの措置は、問答無用の最適成長「論理」で決められており、お上が決めるような損壊原発を中心とする同心円を超えて広がる放射性プルームの流れを無視するものだった。規制区域は、20キロ圏内の強制避難区域(50ミリシーベルト以上)と30キロ圏内の自主避難区域(2050ミリシーベルト)で表すものだった12。災害を起こした原発から漏洩(ろうえい)した放射性汚染物質の拡散、廃棄物の焼却処分、食品検査の緩和、福島沿岸漁場(相馬市、いわき市)の放射能で汚染した魚類の流通再開、たとえばファーストフード業界が汚染地域を安価な食品を生産するために再活用すること13が、放射性物質の生物濃縮を通して、人間および他の生物の過剰被曝をもたらす原因になる。このことは、放射線の危害に関して適用される制度的な政策により、人口の一定割合が日本における原発維持「コスト」の一部として計算されてきたことを意味している。
(「楽しく前向きに!」、「頑張れ、日本!」、「絆!」といった)説得テクニックと混乱が国民意識に吹き込まれつづけ、通俗的な愛国主義者が、明治時代の輝かしい日々の、あるいは1950年代後期の岸政権時代の主導的な日本を回復しようではないかと駆り立てているなか、被災した国民が賠償を伴った避難と医療保障を求める主張が一層むつかしくさせられている。安倍政権は「根拠のない噂(風評)」を一掃する企てを強化し、避難民に元の居住地に帰還するように迫ってきた。お膳立てされた謝罪、福島産品の販売促進キャンペーン、帰還の見込みのある避難民への線量計の無料配布、除染・建設計画、さらには奇跡の癌医療14さえも繰り出すのに並んで、地方自治体のキャペーン(絆プロジェクト)が住民に、家族、地域社会、土地を優先するように奨励する一方で、一般住民はまた、放射線被曝によるリスクについて、自分たち自身で判断するようにいわれている。だが、強制避難区域または自主避難区域から避難した住民(合計16万人)がそのような判断をする能力は、当局の検査情報によって損なわれている。避難区域に残留した人たちにとっても、事情は同じである。彼らは、食品、水、空気の放射線レベルに関する詳細情報と無数のタイプの放射性核種による被害から防護するための手立てを与えられていない15
(水、土壌、空気、有機および無機物質のガンマ、ベータ、アルファの全範におよぶ)放射性物質の精密な検出が明らかに必須であるが、安倍政権による愛国的な「為せば成る」積極主義や経済的解決の強調のしすぎは、フクシマの複雑な問題に関する現実的な評価と適切な対応から外れている。たとえば除染は居住環境に深刻な害をおよぼしかねないし16、移動しやすい放射性微粒子が除染された区域をふたたび汚染しないという保証はほとんどない。米国原子力委員会が、1955年以来、マーシャル諸島における大惨事をもたらす核兵器実験によって、放射性物質は拡散するのではなく、海水中に散在している水塊や海流に乗って移動することを知っていた17にもかかわらず、日本政府と東京電力は2013年時点で、陸上でも太平洋でも除染法として拡散を採用しつづけている。避難と原子炉の埋葬に代えて、除染に頼ることは、真の効果に異論続出の作業を実施する建設会社に多額の契約で報いることを意味している。同時に、放射性物質の作用、拡散の様相、防護策について、混乱が社会全体をおおっている18
惨事当初の被害者に加えて、この過剰人口の被害を後遺症的に生みだすのは、後期資本主義社会における危機の症候である。現在のHIV(エイズ)や癌の医療が治療方法よりも経営を優先し、長期にわたる処方によって医薬産業を利しているのと同じように、フクシマにおける線量監視・除染プログラムは、処方の一環として、現実認識を遅らせる嫌いがある。同じように、低レベル放射線被曝がもたらす慢性疾患は人を生かしたままにするが、衰弱した健康状態の一生を送らせることになる。社会的な不安を静めることをねらって一致協力した企ては、放射線を――研究し、なんらかの方法で産業生産に組み込むが、的確に診断されたわけでも、適正に対処されたわけでなくても――しだいに日常生活の一部として常態化させることを意図したもののようである。国境を超えた市場競争に代えて、電力に対する飽くなき欲求が増大するにつれ、心的投影としての外患の脅威と国家政策の転換、社会的・環境的な骨組みの疲労骨折が進行しつつあり、フクシマ惨事も正しくその一例である。人びとが、制度疲労していても主権を誇る産業の副産物として、原子炉から拡散する放射性物質(ホットな金属粒子)を摂取するとき、彼らの健康は、主権者たる産業の企業生命の防護と拡張の代償として、犠牲に供されてきたし、供されているのである。

Ⅲ 放射線効果の概要
一般国民が、惑星の生成に伴って普遍的に共有する自然背景放射線から、航空機、X線、CATスキャン、それにバナナ(バナナに含まれるカリウム40の自然背景放射線量は0.0117 ベクレル/kg)によるかなりの放射線量、(福島県立医科大学の山下俊一が説いた)心理社会的な幸せの処方まで、放射線に関する間違った情報を与えられている一方、1945年以前から、時間とともに人間の身体は自然の放射線被曝による変異を修正するように進化してきたと一般に認められている。しかしながら、核兵器や原子力発電により生成する、人為的に改変された放射性物質による変異は、人体が放射線に被曝するのが体内からであろうが、体外からであろうが、それほど簡単には修復されえない。人工のウラン生成物が植物連鎖に入りこむと、放射性核種の種類によるが、放射線電離作用が環境のなかで安定するまで長い時間(一般的に100,000年)がかかる。
かつて、ヒロシマとナガサキの被爆者が病気になったのは、原爆の閃光と熱波を外部から直に浴びたからであるとのみ信じられていたが、倦怠感、心臓の異常、さまざまな癌、白血病、脱毛症、皮膚病、発疹といった慢性的な効果は、低線量の内部放射線被曝もまた原因になっていたと、段階的にようやく知られるようになった19。米国原子力委員会が国際的な放射線被曝基本原則と安全基準を確定するために、米国主導で設置した原爆傷害調査委員会(ABCC)による被爆者に対する長期追跡研究の結果、癌のリスクが被曝した線量と正比例すると計算された(閾値なし直線モデル)。この研究は、とりわけ内部被曝の場合、100ミリシーベルト/年(1ミリシーベルト=1レントゲン)以下では、いかなる被曝も健康に対する影響は無視できるだろうと結論づけた。この計算は、性差、年齢、生理特性、食習慣、被曝期間、生態学的な分布特性といった差異を認めていなかった。また、非癌、非遺伝性、非致死性の疾患をすべて放射線由来のものでないとみなしていた(自己免疫疾患、不妊、出生異常、他の発癌物質との複合)。いまでは権威筋の一部はこの計算が100分の1ないし1000分の1もリスクを控えめに算出していると認識しているが、国際放射線防護委員会(ICRP)が定式化した、このモデルは、いまだ(IAEAUNSCEARWHOによる)国際的な放射線政策の情報源のままであり、ウィンズケール、セラフィールド、スリーマイル・アイランド、チェルノブイリ、フクシマ、その他どこでも、放射線緊急事態の目安になっている20。外部線量が規定行動レベル(外部線量率の避難限度は、100マイクロシーベルト/時)以下である場合でさえ、やはり放射性粒子が空中や水中に存在するかも知れず、摂取のリスクがある。じっさい2012527日、フクシマに関する国連特別報告者、アナンド・グローヴァーは報告を公表し、日本政府の施策を厳しく批判し、チェルノブイリ惨事で低線量放射線の作用について多く学んだはずであると指摘した21
1940年代初期からこのかた、危険が理解されてはいるが22、これまで20年間にわたる体外および体内の研究によって、ウラン生成物が微粒子として摂取されると、生物体に対して(DNAを損傷する)遺伝毒性、(細胞を損傷する)細胞傷害性23、(変異を誘発する)催奇性を発揮しうると確認されている24。摂取されたウラン生成物は、細胞、軟組織、血液、骨に入り込み、崩壊(電離化)するにつれて常時、特定の部位に低線量放射線を照射する。これら照射による「熱」が、被曝している細胞を殺したり、その生化学構成を改変したりする。このため、不調と疾患、変異/ゲノム不安定性、各種の癌と白血病の条件が生じる25。生殖器官が侵されると、その性細胞は次世代で再生産される。胎児の柔組織に入りこむと、これら生成物の作用によって、出生が阻害されたり、欠陥(催奇欠陥)を誘発されたりしかねない。これら生成物が排泄されたとしても、活性は変わらず、生物にふたたび摂取されると損傷を引き起こす。
国民健康統計データや被災地の医療機関における健康診断が厳重な制度的管制のもとに置かれているにもかかわらず、本稿の執筆時点で、福島県の子どもたち43人が甲状腺癌またはその疑い例と診断されている(訳注)。福島県で検査された210,000人の子どもたちのうち、18人が甲状腺癌と診断され、201365日に報告された12人から増えており、その他にも25人が完全な癌になっているのではないかと疑われている26。福島県立医科大学が甲状腺検査の全データを公表しているわけではないが、20124月から8月までの第8回県民健康管理調査は、検査を受けた42,060人の子どもたちのうち、43パーセントが甲状腺に異常な結節や膨張した嚢胞が認められることを示した27。この検査は(12ミリといった)小さな結節を除外しているので、これは過小評価かもしれないが、チェルノブイリ惨事後の周辺地域における同じ疾患に比べて高率に発症している28 さらに、茨城県の生活協同組合が実施した調査で、検査された85人の子どもたちのうち、70パーセントから検出され29、貧血、発疹、無気力、不時の鼻血、めまい、頭痛が常態になり、長引いて慢性になり、悪化するなど、放射線毒性に特有な症状がおびただしく発言している30
(訳注)820日、第12回「県民健康管理調査」検討委員会で公表された人数:小児甲状腺癌(乳頭癌)の確定例18人、疑い例25人。その後の1112日、第13回検討委員会では、確定例26人、疑い例32人と発表。なお、疑い例とは、細胞診で癌と診断され、手術の結果を待って、最終的に判断される例を指す。これまでに、手術結果によって良性腫瘍と判断されたのは、1例のみである。
WHOUNSCEARは、フクシマからの放出量がチェルノブイリに比べて大幅に少なく、健康への影響による疾患の確かな増加は少ないだろうと結論づけているが、これはあまりにも楽観的にすぎるように思える。第一に、コリウム(溶融核燃料)は所在がまだ突き止められていなくて、測定もままならず、汚染物質の放出も封じこめられていないので、フクシマ原発から放出された放射性物質の正確な量はわかっていない。爆発の当初に放出されたセシウム137の量(ざっと3.8×1017ベクレル)だけでも国際原子力事象評価尺度のレベル7に相当し、その後2年間にわたり、大気中や海中に放出された放射性物質の総量は449000億ベクレルと推計されている。第二に、政府による健康評価は全人口を対象にした計測にもとづいていない31。それぞれ新陳代謝の異なる妊娠中の女性たち、子どもたち、大人たちが、蓄積線量であれ、一時線量であれ、250ミリシーベルト/年を超える放射能汚染に被曝したことを考えると、フクシマにおけるリスクは政府およびIAEAと提携する放射線防護関連機関によって過小評価されている33(チェルノブイリの強制避難レベルは5ミリシーベルト/年、自主避難レベルは1ミリシ-ベルト/年であり、またヨーロッパにおける原発作業員の現行被曝限度は5ミリシーベルト/年である)。韓国政府は20138月から東北各県産の魚類と食品に対する選択的輸入禁止の実施をもって対応したし、米国食品・医薬品局は20137月に輸入警戒リストを改訂して(輸入警戒99-33)、新たな品目を追加し、ロシア連邦獣医植物衛生調査局は8県の産品を販売する主要企業に対する輸入禁止を継続している。東京電力と政府がとる立場は、犯罪的怠慢が自明な事例に相当し、さらに広い視野で見れば、フクシマ核惨事の影響にもっと効果的に対処し、将来の同じような事象がもたらす危険性を予測するために、国境を超える汚染に関する国際法による査察が必要であることを暗示している。

Ⅳ イラク、米国、日本:被爆者
フクシマと比較するために、他の大量放射線被曝の現地を参照するのは有益である。たとえば、1998年と2003年、鎌仲ひとみ率いる日本のドキュメンタリー映画(『ヒバクシャ――世界の終わりに』2003年)撮影班が、1991年の第一次湾岸戦争でばら撒かれた放射性物質の影響を追跡するためにイラク(バスラ、ファルージャ)を訪問した。.
このドキュメンタリーは、バスラとファルージャで幼児・小児の白血病(核放射線障害に特有な急性の骨髄白血病)と深刻な出生異常が急増し、他の地域でも疑わしい例があることを医師たちや被災家族が1998年以降に報告するのを記録している。彼らは病源を追って、第一次イラク戦争(1990年~1991年)の砂漠の嵐作戦で米英軍が使った劣化ウラン弾に行き着いた。劣化ウランとは、核兵器または原発の原子炉で使うウラン235同位元素の濃度を高める天然ウランの濃縮工程から派生するウラン生成物である。この工程の放射性廃棄物の混合物の大部分はウラン238(他にトリウムとプロトアクチニウム)であり、その放射能半減期は45年である。第一次と第二次(限りなき自由作戦、2003年)、2度のイラク戦争でA-10 ウォートホッグ攻撃機と機甲歩兵部隊(M1エイブラムス戦車とM2ブラッドレー歩兵戦闘車)が(4500グラムの)固形ウランで被覆した弾丸を大量に使用し、その結果、2度の戦争でそれぞれ300トンと500トンの微粉末化した劣化ウランが戦場と水路にばら撒かれることになった35
「約2000トンの劣化ウランが…」
鎌仲ひとみ監督作品『被爆者:世界の終わりに』
(グループ現代フィルム、2003年)
WHOは、劣化ウランを含む塵を吸引することによって、イラク国民の健康に、出生異常、先天性奇形、癌といった形の長期的影響がおよぶとした委託報告(2004年)を独自に作成したが、米英両政府に圧力をかけられ、劣化ウランによるリスクを隠すという任務違反を犯して、公表を遅らせた36。イラクの10,800世帯を対象として先天性異常の出生率を測定するWHO・イラク政府保健省共同報告が201211月に公表されるはずだったが、これもまた遅れ、いまのところ、その3つの部のうち、最初の「暫定報告」の部だけが公表されている。匿名の著者らは、イラクで先天性異常が常軌を逸した高い比率で発生している証拠がないと結論づけた37。元・国連事務総長補佐、ハンス・フォン=スポネックもまた、「米国政府は、劣化ウランが使用され、健康と環境に深刻な危険をもたらしたイラク南部におけるWHOの調査を制限した」と述べた38
20121月から2月にかけて、11名の研究者らがファルージャの711世帯(4800人)を訪問し、癌、出産の結果、乳児死亡率の詳細を調査した39。研究は「2005年から2009年のイラク、ファルージャにおける癌、乳児死亡率、出産時性差比率」の表題で論文にまとめられ、癌と先天性出産時異常の激増を示す事例証拠に間違いがないと結論づけた。イラクの乳児死亡率(1000出産例あたり80例)は、エジプト(19例)、ヨルダン(17例)、クウェート(9.7例)よりずっと高かった。白血病が38倍、女性の乳癌が10倍に増加し、成人のリンパ腫と脳腫瘍がかなり増加していることも判明した。癌のタイプは、「原爆による放射線とフォールアウトに含まれるウランで被曝したヒロシマ被爆者(に見つかる癌)と似ている」と報告されたし、有病率もやはり非常に高かった40。イラクの女性の多くは、これ以上、子どもを生まないようにと助言されてきた。
上記に加えて、砂漠の嵐作戦に従事した米国軍人80万人のうち、30パーセントが後に劣化ウラン粒子の摂取による慢性疾患にかかり、彼ら退役軍人の子どもたちにもまた奇形が急増していることを何件かの研究が明らかにした。「湾岸戦争病」と大雑把に呼ばれる、こうした影響には、慢性倦怠感、認知障害、自律神経失調、神経系損傷などがある421944年から45年にかけてハンフォードの原子炉でナガサキ原爆のプルトニウムが生産されていたとき、エアロゾル化したウラン生成物の大きなプルーム(550,000キューリー)が放出された。ハンフォード原子炉の近在に住む人びとは、長期間にわたり呼吸によって、撒き散らされた物質で被曝した。肥田は一家族との会話を通じて、1949年に政府の秘密調査が、ハンフォードとロッキー・フラッツの原子炉や工場の近辺の地域社会で癌が5倍に増加していることを明らかにしたことを知った(1984年になって、ようやく公表)43。アブラム・ペトカウは1972年に、長期にわたる低線量放射線による常時被曝が高線量の一時被曝よりも有害でありうることを観察したが、この「ペトカウ効果」がこの知見を支えている。このペトカウ効果は1990年代はじめ、バーラコヴァほかが、放射線照射後の動物類および人の細胞における、老化過程に似た変化を観察して確認された44
米軍による放射能戦争研究(1941年~1974年)の一環として、早くも1941年に、ウラン生成物を摂取すると、(接触時間、粒子の溶解性、半減期、排泄率しだいで)深刻な害をこうむることが判明していたことを考えると、ウラン生成物が使用され、ばらまかれたハンフォード、ヒロシマとナガサキ、バスラとファルージャ、その他の場所における結末は、2つの側面、そのような兵器を民間人や戦闘員らに対して使用すること、ならびに、環境を劣化することによって、個人が健康と福利を含む適正な生活条件を享受する権利を侵害することにおいて、(化学、生物学、その他の)大量破壊兵器の使用が人道に対する犯罪的な怠慢行為または/および犯罪行為であることをうかがわせる。微細な劣化ウランがさらに野放しとなり、生態系にばらまかれ、再循環することもまた深く懸念される。一次被害を受けた地域に住む人びとが最も明確に体験したように、原発からの放射能放出の風下または下流における被曝もまた、癌および非癌疾患の罹患率を高めることになる。

Ⅴ 現地証拠
V Local testimonies
肥田医師の主張と「風下住民」説は、突飛でないかもしれない45。スイスの科学画家、コーネリア・ヘッセ=ホニガーは20年以上にわたり、原子力発電所の周辺とフォールアウト地域の周辺で「ホンコノハムシ」(異翅類の昆虫)を採集し、描画してきた。こうした昆虫は生息域に残留することによって特異な特徴を持つようになり、ヘッセ=ホニガーは、これら昆虫が放射線に敏感であり、ネズミや人よりもずっと速く成長するので、(早期警戒のための)「生物指標」になると叙述する46。彼女の野外調査地は、チェルノブイリ、スイス(アールガウ州)、スウェーデン、フランス(ラ・アーグ)、ドイツ(グンドラミンゲン原発)、セラフィールド(英国カンブリア州)、ペンシルヴェニア(スリーマイル・アイランド)、ネヴァダ砂漠におよぶ。
左:スイス、ゲスゲンのSoft bug (カメムシ科Miridae
右:スイス、ロイエンタールのシリアゲムシ(Panorpis Communis
© Cornelia Hesse-Honegger
彼女の調査は、チェルノブイリにおける「低線量事象」範疇に関する公式見解、および、急性放射線障害による死亡者数を28人ないし32人とし、甲状腺癌の結果としての死亡者数を15人とする公式見解による見積もりが間違いであり、改めて計算されるべきであることをうかがわせている472007年までに採集された昆虫16,000匹のうち、重度の異常(触覚の欠損、翅の奇形、体分節の非対称、腫瘍、黒斑、体色変異)のあるものが30パーセント増加してことを彼女は明らかにしており、これは正常比率の1ないし3パーセントの10倍に達するほど高い。彼女は、放射線分布が、ヒロシマで用いられたモデルのような、爆心地からの距離を測定するために用いられる同心円で決められるのではなく、地形、風向き、水文学的要因によって決まることを明らかにした。
1990年代を通じて無数の研究がチェルノブイリ周辺の被災地で実施されたあと、2000年になってはじめて、コフィ・アナン国連事務総長は、チェルノブイリから放出された(ヒロシマとナガサキの原爆による放出量の100倍になる)放射能が、700万人の過剰な人びとの慢性疾患と300万人の子どもたちの未熟期死亡の原因になったと発表した48。これは、家族が汚染地で正常な生活をつづけており、彼らの病気は心理社会学的なものであるとするIAEA勧告(そして、「放射線防護当局筋」のコンセンサス)と正反対の結果である。
武田慎平は、通説に対抗し、原子炉のメルトダウン以降、東北地方の日常生活における放射能汚染の存在をもっと明快に感知しようと企ててきた一アーティストである。フクシマ出身、ニューヨーク在住の武田は、「3.11」表現に使われる主流派の象徴的イメージや情報とは対照的に、「史上最悪の人為的な核事故」のオルターナティヴな「直接記録」の作成を追求してきた。彼は福島現代美術ビエンナーレ2012で日本デビューを授かった作品「痕跡」において、ヒップホップ・アーティストの安念真吾、建設家のヒエイ・ケイスケと一緒に関東・東北地方を旅行し、歴史・文化の名所(寺社、古戦場、廃墟、1か所は病院)12か所で土壌サンプルを集めた。武田は「自動放射線画像化」処理を採用し、1か月にわたり暗箱のなかで感光材(ハロゲン化銀ゼラチン・フィルム)を土壌サンプルに被曝させた。このようにして、武田はヘッセ=ホニガーと同じように、自身による介入を最小限に抑えることによって、土壌中の活性含有物に固有の(質量・時間・エネルギー)化学・放射線反応を記録し、可視化する実現可能な方法を考案したのである。
武田慎平
福島県二本松城の土壌サンプル「痕跡」
2012
この作品はまた、視覚表現としての解釈を要求する。純粋に審美的な考察を横において、武田作品の具体的に科学的な様式は、放射能汚染の只中にある「いのち」の政治化された状況を暴露することを戦略的にねらっている。武田の提示するイメージは、土壌のなかで燃えている微粒子を反映し、それが(空気、水、または食品を通して)摂取されると、体内で燃えつづける。ウラン生成物の地質年代的な久遠と思える時間を考えると、これらの物質が生命圏で循環しつづけるとき、危険とは、「すべて安全」と繰り返すメッセージを通して、放射線測定が気象通報のようになりかねず、発表されては暮らしの現実と受けとめかねなくなることである。武田は放射線量と粒子類別を分別したり定量化したりすることを拒否することによって、測定のための放射線測定を信頼すること、そして独断的に決められた途方もない放射線量限度を拒否したようである。「痕跡」の焦点は、放射線を否定不能な物質性として具現化することにあり、このような測定が架空の現実を見せるように手軽に操作される可能性に意識を研ぎ澄まさせる。
さらにまた、東北地方の各地に分布する放射能汚染の影響を受けた動物に関する科学研究もまた紹介されはじめている。鳥類学者、ティモシー・ムソーとアンダース・モラーは、チェルノブイリ周辺の電離放射線レベルが高い(10マイクロシーベルト/時)地域における鳥類の白内障に関する研究実績で有名であり、フクシマ原発の周辺に生息するツバメに研究対象を拡大し、これらの鳥がほぼ消滅したことと、生き残った鳥に「小頭と低繁殖率」が見受けられることを明らかにした49
サル、ウマ、ネズミ、コケにも同じ影響が見受けられる。野生のサルは周辺の森林で葉の芽を摂食しており、その筋肉組織に高レベルのセシウム137が検出される(20113月時点で10,00025,000ベクレル/kg20116月時点で5001500ベクレル/kg、同年12月~20123月期間で2,000ベクレル/kg50。福島大学の研究者らは、サルたちが南相馬の立ち入り禁止区域の森林を巡回するさいの放射線レベルのデータを収集し、それを地図化するために、何匹かのサルにGPS装置と線量計を装着した。原子炉から20キロに位置する細川牧場では、2013年に15頭の馬が誕生し、そのうち14頭の生存期間は1週間から1か月だった514頭の成体馬もまた倒れ、やがて死亡した。馬たちは肝不全(および赤血球細胞の生成不足)と診断された。フクシマ第1から30キロ地点の森林(福島県川内村)で2012年はじめに標本捕獲された惨事以来52世代目の野ネズミは、いまだに対照区に比べて100倍に達する高レベルのセシウム137測定値(3100ベクレル)を示し、同地域のミミズ、木の葉、土壌でも同様な結果が得られた52。これらの地域で、人びとはやはり米を育て、あるいはそこに帰還している。20137月はじめ、原発から50キロ離れた福島市の家屋の屋根に生育するコケは、極めて高いセシウム137濃縮値(1,785,216ベクレル/kg)に逆戻りしていた53
細川牧場で死んだ馬、2013
20137月、原発の下を流れる地下水の放射線値が、惨事のはじめ以来、9000パーセント上昇し、これまで測定されたなかで最高の値を示した(ストロンチウム、セシウム、トリチウム、プルトニウムといったベータ粒子の総量で、9億ベクレル/m3)。東京電力経営陣は722日、自民党と公明党が国政選挙で勝利した翌日、1日あたり300トンの汚染水が海中に流出し(その後、日量400トンに格上げ)54、またこれに加えて、貯蔵タンクから240億ベクレルのトリチウムに汚染した水が海中に漏出したと発表した55。気象庁の青山道夫研究官は、2013IAEA科学フォーラムにおいて、原発から海に日量600億ベクレル(各月9000億ベクレル)のセシウム137とストロンチウム90が直接放出されていると報告した。これは、原発が月量0.3テラベクレル(3000億ベクレル)のセシウム137を漏洩していると計算した、東京海洋大学の神田穣太教授による最近の見積よりもさらに大きい56。青山は、56号炉が原子炉の冷却のために港内から組み上げ、その結果、敷地の北側で排出する水を計算に入れていた57
トリチウム化した水(3H2O、すなわち「重水」)は、核産業による請け合いに反して、DNAに結合し、生物に重大な害をおよぼしうる。一度、トリチウムが水に結合すると、それを取り除く方法はまだ見つかっていない58。おまけに、原子炉から水浸しの地下室に漏出した量は、セシウム137276ペタ(10151000兆)ベクレル(炉心目録値の40パーセント)に、ストロンチウム9023から33ペタベクレル(炉心目録値の4.4ないし6.3パーセント)にそれぞれ上方修正された。これはチェルノブイリ事故で空中に放出された総量のざっと3倍にあたる59
これらすべてにかかわらず、最近、地方自治体当局は、いわき市(原発から40キロ)の公共浜辺で、(検査した一定の量、または放射線タイプを除外しながら)放射線レベルが検出限界値以下であると主張し、遊泳用に海開きした60。これは、東北海岸沿いの海藻、甲殻類、魚類のセシウム137濃縮、および東京電力による放射性物質の海中投棄を知りながら、決定されたものである。
このこともまた、ベーリング海峡、ロシアの北極海沿岸線、北極野生生物保護区、アラスカ、ブリティッシュ・コロンビアの沿岸に生息するワモンアザラシ、セイウチなど、はるか遠くの海洋野生生物に対する、2011年以来、既知の影響を考えて、懸念される。アザラシの検死によって、肺の液体貯留、肝臓の白斑、脳の異常成長が見つかった。ブリティッシュ・コロンビアに住み、スキーナ川の紅鮭に暮らしを頼る先住民の人びともまた、海洋回遊中の成長局面から産卵のために戻ってきて川を遡上する魚の劇的な数の減少と健康の劣化を報告してきた。これら動物が、脱毛、乾癬、内的成長、動作不活発の形で示す症状は、自己免疫、リンパ腺、内分泌系に影響をもたらす放射線被曝に呼応する疾患をうかがわせている。これらの地域のアザラシは、海洋を回遊するニシン、マグロ、アイナメ、サケを補食し、さらにその死体はホッキョクグマや鳥類に食べられる61。さらにまた、ヴァンクーヴァー島の浅瀬や岸辺で死んだヒトデが大量に集められた。2013912日、地元のダイバーは、主としてキタムラサキウニと巻き貝を餌にする大量のヒマワリヒトデ(Pycnopodia helianthoides)が海底でさまざまな段階で体がバラバラになっていく様子を目撃した。彼の表現によれば、「腕がただちぎれ、まんなかの盤体がバラバラになります。急速に起こっているようですが、死んだ動物がただ分解しているだけの様子ではありません……20ないし50フィート(6ないし15メートル)の海底には、そこら一面に腕足、口盤、管足、生殖腺、鰓が散らばっています」62
太平洋全体のセシウム・レベルの上昇が核兵器実験期間中の頂点レベルを優に超えているという推測が正しければ、これらのことは、生態系の劣化が予想されてきた以上にはるかに大規模であることを示す先駆的な知見である。

Ⅵ 総括
抽象的なデータは解読困難であり、訓練されていない読者向けに容易に操作されるが、鎌仲(ヒバクシャ)、ヘッセ=ホニガー(カメムシ)、武田(痕跡)による放射能汚染の視覚証拠は、一見したところ不可視である生命圏被害に可視性を与える。地域住民、さらには科学研究がもたらす、放射能に汚染された動植物の証拠は、このような被害を確定する。それぞれの状況は固有のものでありながら、これら多様な事例は、国籍と文化特性の違いを超えた共通の経験――放射能の国境超越性――をうかがわせる。
放射能の問題に関する多国籍核産業の混乱は、経営者、政治家、官僚が深く埋め込まれた核生産系列(ウラン採鉱、原子力発電技術、国家規模の電力生産、兵器の製造と使用、解体と核廃棄物貯蔵)の絶大な規模と集中的な長期投資におそらく駆り立てられているのだろう。
新たな軍用品、技術改革、公共事業、PR作戦のための基金は、安倍政権にとって、すぐにでも調達できるだろうが、水、食品、空気を「安全」な法定放射線限度(1ミリシーベルト/年)に戻すためのコストで縮小してしまう63。産業先進国でありながら、その政府は、国民を防護するための適切な施策――被災地内の年1ミリシーベルトを超える全学校の閉鎖、原発から半径80キロ圏内の避難を希望する国民全員に転居・生活・就学費用に対する手厚い助成金を給付して、彼らを支援すること、汚染食品の消費を国内的・国際的に防止すること、被曝放射能の毒性がもたらす実際の危険に相応した国立医療診療科を整備すること、および放射能に汚染された物質の保管――を実施できないようである64
構造的・科学的な理由によって不明瞭であっても、日本国民の多くは、フクシマ原発が統御下にあるという安倍の主張がウソであるとじゅうぶん気づいているようだ65。主権的な資産と幻の成長に付与される信頼を守ることと維持することを正当化するための物質的条件が抽象化されているために、人間および人間以外の「いのち」という真実のコストが課せられて、増大している。抑制されなければ、このシステムは、体制疲労の果てにありうる崩壊の時まで未来に向けて同じことをつづけるだろう66。状況はどちらにしても、危機の緊急性を把握し、海洋のさらなる汚染の防止を先送りすることにストップをかけるように要求し、惑星上の「いのち」を支える最高に活力ある構造のひとつを再建する日本の人びとと国際社会の能力しだいであるが、有意義な変革が達成されるまで悪化しつづけるであろう。短期的には、原子力がもたらすリスクを測る定式を再修正して、生命圏の生類の健康を妥協の余地のない因数として反映するようにしなければならない。そうすれば、公衆衛生、食品の安全性、汚染地からの避難に即効作用があるだろう。長期的には、エネルギー源の選択に関する論争が決定的だが、組織的で乱視的な利益優先を改め、国家・企業の利害が、「いのち」を支える核心的な価値をハイジャックすることがもはやないようにしなければならない。
【筆者】
アダム・ブロイノスキー(Adam Broinowskiは、オーストラリア国立大学、文化・歴史・言語学部、オーストラリア研究センターの博士課程修了後研究生。著書“Cultural Responses to Occupation in Japan: The Performing Body during and after the Cold War”(『日本における占領に対する文化反応――冷戦期間中および以後の機能集団』)を来年出版の予定。彼の最近の研究は、1945年以降の放射能汚染に関する理解に関連する。
【推奨されるクレジット表記】
原子力発電・原爆の子 フクシマ:「いのち」と国境を越える放射能汚染
Adam Broinowski, "Fukushima: Lifeand the Transnationality of Radioactive Contamination," The Asia-Pacific Journal, Vol. 11, Issue 41, No. 3, October 14, 2013.
 【脚注】
1.      本稿のオリジナル版は、20137月オーストラリア会議・日本研究協会講演“Limits in the Modern Episteme: Understanding Fukushima through visualising radioactivity”(「現代認識論の限界――放射能の可視化によるフクシマ理解」)。
2.      Gavan McCormack, The emptiness of Japanese affluence(ガヴァン・マコーマック『豊かな日本の空虚さ』)、New York: M.E. Sharpe, 2001; およびJeff Kingston, Japan's quiet transformation: social change and civil society in 21st Century Japan(ジェフ・キングストン『日本の静かな変容――21世紀日本の社会変革と市民社会』)、 London and New York: Routlegecurzon, 2004, pp. 122-156を参照。
3.      経営者側は汚染によるゴルフ場(フクシマ原発から45キロ)閉鎖の損害賠償を求めて東京電力を提訴。東電側弁護団(長島、大野、常松)は、東電の所有物でないものの責任を負えないと主張した。裁判所は被告側答弁を支持した。裁判所はまた、ゴルフ場の平均放射線レベルが20114月に設定された校庭の使用基準である3.8マイクロシーベルトより低いので、ゴルフ場の営業を再開できると述べた。
Iwata Tomohiro, ‘TEPCO: Radioactive substances belong to landowners, not us’, Asahi Shimbun Weekly AERA, 24 November 2011, here.
プロメテウスの罠〔4〕 東電述べた「放射性物質は無主物である」
4.      David Pacchioli, ‘Absurd: Intentionally dumping Fukushima nuclear material into ocean from land “is not considered dumping” — Allowed under international law?’,(デイヴィッド・パッチオリ「笑止千万:陸上から海中へのフクシマ核物質の意図的な投棄は『投棄とは考えられていない』――国際法で許されているのか?」)、Seafood Safety and Policy, Oceanus, WHOI, Vol. 50, No. 1, Spring 2013, 14 May, 2013.
5.      数年間にわたる災害復旧を担保するための25兆円のうち、約100億円がフクシマ核惨事後に原発閉鎖を命じられた電力事業会社のコストを帳消しにするために留保された。See ‘Funds from disaster relief budget given to nuclear operators’, June 2013, here.
6.      John Holifena, ‘Japan’s PM Abe to push nuclear sales in Europe’(ジョン・ホリエナ「安部首相による核のヨーロッパ売り込み」)、JDP, 14 May 2013,
http://japandailypress.com/japans-pm-abe-to-push-nuclear-technology-sales-in-europe-1428791/.
7.      2013106日付け朝日新聞、内山修「東芝、英で原発会社買収へ
8.      201394日付け時事通信「汚染水漏れ『五輪時には解決』=安部首相
9.      See PSR, Nuclear Power and France: Setting the Record Straight’(「原子力とフランス:記録を正す」)、16 September 2008, here, Jeff McMahon, ‘French System for Cleaning Fuushima Water Blamed for Leukemia, Polluted Beaches in Europe’ (ジェフ・マクマホン「フランス方式のフクシマ汚染水浄化が白血病で非難、ヨーロッパの汚染された海浜」)、25 April 2011, here.
10.   (欠番)
11.   Mari Yamaguchi, ‘Overflowing tank cause of new leak at Fukushima(山口真里「タンク溢れ水でフクシマの新たな漏洩」)、Associated Press, 3 October 2013, here.
12.   See Miguel Quintana, ‘Radiation Decontamination in Fukushima: a critical perspective from the ground’(ミゲル・クンタナ「フクシマの放射能除染:地上からの批判的視点」)、The Asia-Pacific Journal, Vol 10, Issue 13, No 3, March 26, 2012 - See more here.
13.   ‘Fish caught off the Fukushima coast to hit the market’(「フクシマ沖合の魚、市場出荷へ」)、26 September 2013, here; ‘Yoshinoya to grow rice and vegetables in Fukushima’(「吉野家、フクシマで米・野菜栽培」)、1 October 2013, here.
14.   たとえば、亀田メディカル・センターは、イスラエルのIceCureメディカルから癌医療システムを購入した。2 October 2013, ‘Innovative Israeli Cancer Treatment to be Tested in Japan’(「イスラエルの革新的癌治療、日本で試験へ」)、here.  
15.   ‘White Paper: Fukushima Health Survey Occupies Medical and Legal Conundrum’(「白書:福島健康調査は医療と法律の難問」)、Simply Info, 8 November 2012, here.
16.   Winifred Bird, ‘Fukushima nuclear cleanup could create its own environmental disaster: Decontaminating the Fukushima region to remove radioactive particles will not be possible without removing large amounts of soil, leaves and plants’(ウィニフレッド・バード「フクシマの放射能除染そのものが環境災害の元凶になりかねない:放射性粒子除去によるフクシマ地域除染は、大量の土壌、木の葉、食部の除去抜きでは不可能」)、The Guardian, 9 January 2012, here. 記事中で言及されている100ミリシーベルト/年の安全基準は異論の的になっている。
17.   Robert Alvarez, ‘Nuclear Tuna and NPR's Trivialization’, Institute for Policy Studies, 31 May 2012, here. See also, ‘Fukushima radiation could be ocean risk’, 26 January 2012, here.
18.   アレクセイ・ヤブロコフ、ワシリー・ネツレンコ、マイクル・シュナイダー、広瀬隆、小出裕章、ヘレン・カルディコット、アーニー・ガンダーセン、村田光平、その他は、放射能、その他の問題は東京電力や日本政府が認めたものより悪いと主張している。原子力規制委員会の更田豊志委員もまた、東電のデータがまったくあてにならないのではと疑っている。See Matt McGrath, ‘Fukushima leak is 'much worse than we were led to believe'(マット・マクグラス「フクシマ漏洩は信じこまされていた以上に深刻」)、22 August 2013,here; Jason Motlagh, ‘The News From Fukushima Just Gets Worse, and the Japanese Public Wants Answers’(ジェイソン・モトラフ「フクシマからのニュースが深刻に、日本国民は解答を要求」)、22 August 2013, here.
19.   Satoh C., Kodaira M., ‘Effects of Radiation on Children’(サトウ・C、コダイラ・M「子どもに対する放射線作用」)、 Nature, 1996, 383: 226; Nakamura N., ‘Genetic Effects of Radiation in Atomic-bomb Survivors and Their Children: Past, Present and Future’(ナカムラ・N 「被爆者とその子どもたちに対する放射能による遺伝的影響:過去、現在、未来」)、Journal of Radiation Research, 2006, 47 (Supplement): B67-B73.
20.   See ‘Recommendations of the European Committee on Radiation Risk: Health Effects of Ionising Radiation Exposure at Low Doses for Radiation Protection Purposes Regulators’, Brussels, 2003, here.  
21.   Thierry Ribault, ‘UN Special Rapporteur Anand Grover on Fukushima: A Stunning Report Brushed Aside by the Japanese Government ’ (ティエリー・リボー「アナンド・グローヴァー報告と恥ずかしい日本政府の反論」)、Japan Focus, 10 June 2013, here.
22.   1939年から1941年にかけて、マンハッタン計画の科学者らは「分裂生成物」が光子と微粒子放射線を放出するのを観測し、その代謝を研究することによって、放射能が胎児に危険であるとともに、摂取すれば、やはり危険になること、またストロンチウムがカルシウムの類縁物質であり、将来の世代に有害である発癌作用を有することを究明した。194310月、「放射性物質の軍事兵器利用」に関するS-1委員会のJ・コナント、A・コンプトン、H・ユーリー諸博士で構成される小委員会は、グローヴス将軍に書簡を送り、核堆積棒から収集したウラン生成物を兵器として使用し、さまざまな手段で敵国領土に散布すること(地上発射弾、陸上車両、空中投下爆弾による煙霧または液体の散布)を進言した。そのような兵器の目的は、敵国の食品と水源を汚染し、空港、鉄道敷地を含む土地を居住不適にし、米軍兵や自国民をポタシウム、ビタミンD、カルシウム濃縮液で防護する一方、敵側の軍民を殺傷することであった。See ‘Groves Memo’, 30 October 1943, here; also Langley P., Medicine and the Bomb: Deceptions from Trinity to Maralinga(ラングレイ・P「医療と爆弾:トリニティからマラリンガ〔オーストラリアの旧核実験場〕に引き継がれたペテン」)、Port Willunga, SA: Paul J. Langley, July 2012: 7-9.  
23.   たとえば、Agency for Toxic Substances and Disease Registry (ATSDR), Toxicological Profile for Uranium(米国環境有害物質・特定疾病対策庁「ウランの毒物特性」)、U.S. Department of Health and Human Services, 1999, here.
24.   プルトニウム239は半減期24,000年のアルファ放出体であり、鉄としてふるまい、肝臓、脾臓、骨髄に沈着する。同量のガンマまたはベータ放射線の10ないし1000倍の染色体損傷を引き起こす。(酸素との接触で発火する)自然発火性があり、温度変化によって体積と密度を変える。摂取すると、熱のため猛毒になり、(プルトニウム238の場合)暗がりで輝き、現在、火星のキュリオシティ探査機のエネルギー源に使われている。セシウム137はガンマ放射体であり、核燃料・廃棄物中に最も多く含まれる核分裂生成物である。半減期が30年であり、高エネルギー崩壊し、化学活性と溶解性が高く、フクシマ後、ざっと300年は残存する。筋肉組織に沈着しやすく(前立腺、卵巣、乳癌)、筋肉の悪性腫瘍を引き起こす(横紋筋肉腫、心臓の不整脈、心不全、筋肉発作、意識喪失、記憶喪失)。ストロンチウム(Sr8990)はカルシウムとしてふるまい、骨と歯に沈着し、骨癌、白血病の原因になり、300年間は放射能のままである。上記に加えて、原子炉目録には多種多様な放射性核種がある:【アルファ】トリウム、ラジウム、ネプツニウム、キュリウム244、アメリシウム241、カリフォルニウム、ポロニウム210(超ウラン、アクチニド)、【ガンマ】コバルト60、イリジウム92、バリウム137、ヨウ素131、ランタン140、【ベータ】トリチウム、リン、ニッケル、炭素、【アルファおよびベータ】ストロンチウム90、カドミウム113、ユーロピウム155、クリプトン85、錫121Sn)、サマリウム90、【希ガス】キセノン、ヨウ素131。放射性核種の重量または化学質量が体内組織の損傷の大半を引き起こすので、アルファ粒子を摂取すると、ベータ、ガンマ放射体よりもさらには破壊的になる。
25.   地球上のガンマ放射線の天然放出源は、天然放射性同位元素であり、また宇宙線粒子との相互作用である。放射線の細胞改変・有糸分裂増大能力により、放射線は癌治療(白色T細胞または赤血球細胞)と農業(変異種子による新作物品種の開発、制御照射による食品の殺菌)に利用される。これはまた、抗細胞毒性(化学細胞)の低下を引き起こし、病気を増やすことになる。
26.   福島県民健康管理調査」を参照のこと。
‘Thyroid cancer found in 18 Fukushima children’, NHK, 21 August 2013, here; ‘Thyroid cancer found in 12 minors in Fukushima’, Kyodo, 5 June 2013, ‘Fukushima gov't forced to reveal children's thyroid gland tests,’ 22 April 2013, here.
27.   この量は、セシウムとストロンチウムのみの放出に関する青山道夫のIAEA発言によって推測した。‘44.9 Tbq Contamination Released to Sea and Air in Last 2 years at Fuku Daiichi’(「フク第1、過去2年間で44.9テラベクレルの汚染を海と空中に放出」)、24 September 2013, here.
28.   フクシマは10万人あたり24.9人の子どもたちを記録しているが、同期間内のチェルノブイリの場合、10万人あたり11.3人である。木下黄太による10万人あたり24.9人の計算は、ゴメリ州において、事故5年後の1991年の小児甲状腺癌の発症頻度を10万人あたり11.3人とする、バンダジェフスキーの計算より高い。確定例と疑い例を合算して、フクシマの子どもたちの発癌率は、チェルノブイリ周辺地域における発癌率に比べて、時間が半分で2倍になっている。木下黄太のブログ「放射能防御プロジェクト:甲状腺がん43人に増加、二年半で子供10万人あたり25人の福島、五年で子供10万人あたり11人のゴメリ地域」。
29.   ‘TEPCO finds new radioactive water leak at Fukushima’, Arirang News, 3 October 2013, 00:40-1:00, here.
30.   For a survey from 20 September – 3 October 2013, see Katsumi Takahiro, ‘Fall Japan 2013 Japan National Residents Nosebleed Survey v1.0’, here. See also, Takenouchi Mari, ‘Health damage shown among a family from Fukushima city’, 24 September 2013, here.
31.   メルトダウンを制御するため、フクシマ原発に踏みとどまった58歳の吉田昌郎の食道癌と脳性片麻痺による死と内部被曝との関連を却下したのと同じように、自民党政務調査会長、高市早苗は、「事故を起こした東京電力福島第一原発を含めて、事故によって死亡者が出ている状況ではない。安全性を最大限確保しながら活用するしかない」と断言して、原発の再稼働を正当化した。早苗は産業競争力の維持には電力の安定供給が不可欠としたうえで、「原発は廃炉まで考えると莫大なお金がかかるが、稼働している間のコストは比較的安い」とまで踏み込んで主張した。2013617日付け朝日新聞「原発事故による死亡者は出てない=自民・高市政調会長」。
32.   原子力発電所からのトリチウムの日常放出(40,000ベクレル/リットル)による健康リスクは、核防護団体のあいだで争点になってきた。1990年にカナダで懸念が高まり、ICRPがトリチウムの安全基準を7,000ベクレル/リットルに引き下げ、その後、20ベクレル/リットルになるまで5年毎に100ベクレル/リットルずつ引き下げることを目指すことを余儀なくされるほどだった。
33.   ‘S. Korean minister calls Japan ‘immoral’ for covering-up radiation leak’, Yonhap, 30 September 2013, here.
34.   John Pilger, ‘From Iraq, a tragic reminder to prosecute the war criminals,’ 27 May 2013, here. 米軍はまた、20044月と11月のファルージャにおける強襲でイラク人「暴徒」に対して白燐(wP)を使用した。白燐は、爆裂弾から気体性の雲になって拡散し、酸素、水、皮膚と接触すると発火する。ペンタゴンは、白燐が通常兵器であり、化学兵器でなく、民間人を標的にしていないと主張した。Maurizio Torrealta, ‘Fallujah: The Hidden Massacre’, RAI TV, 2005; George Monbiot, ‘The US Used Chemical Weapons in Iraq–And Then Lied About It’, The Guardian, 15 November 2005.
35.   イラク人口の推計14パーセントが孤児であり、100万世帯に父親がいない。
36.   See Baverstock K., ‘Science, Politics and Ethics in the Low Dose Debate’, Medicine, Conflict and Survival, vol 21 (2), 2005: 88-100.
37.   See here.
38.   See Mozhgan Savabieasfahani, ‘Rise of Cancers and Birth Defects in Iraq: World Health Organization Refuses to Release Data,’ Global Research, 31 July 2013. サヴァビエアスファハニは、発癌原因の絶対的な証拠を見つけるのは困難であっても、異常発症が自明であるとイラク人医師たちは確信していると述べた。彼は、WHO癌プログラム主査を務める英国の癌専門医、キャロル・シコラが、英国メディカル・ジャーナル(Owen Dyer, ‘WHO suppressed evidence on effects of depleted uranium, expert says’, 9 November 2006)で、「必要とされる放射線治療機器、化学療法剤、鎮痛薬が、(イラク制裁委員会の)米英人顧問らによって常に導入を阻止されている」し、WHOでイラクに言及することは、政治的な理由により封じられていると指摘したのを引用した。See also Denis Halliday, ‘WHO Refuses to Publish Report on Cancers and Birth Defects in Iraq Caused by Depleted Uranium Ammunition’, Global Research, 13 September, 2013; Rob Edwards, ‘WHO ‘Suppressed’ Scientific Study Into Depleted Uranium Cancer Fears in Iraq,’ The Sunday Herald, 24 February 2004.
39.   Busby C., Hamdan M., Ariabi E., ‘Cancer, Infant Mortality and Birth Sex-Ratio in Fallujah, Iraq 2005–2009’, International Journal of Environmental Research and Public Health. See also, Patrick Cockburn, ‘Toxic legacy of US assault on Fallujah 'worse than Hiroshima': The shocking rates of infant mortality and cancer in Iraqi city raise new questions about battle’, The Independent, 24 July 2010, here.
40.   Chris Busby, ‘Why the WHO report on congenital anomalies in Iraq is a disgrace,’ 29 September 2013, here.  
41.   劣化ウラン(U238)兵器の化学毒性と労作後倦怠感の関連を示唆する報告がある。See US Army Environmental Policy Institute, June 1995. Also Bertell R., ‘Depleted Uranium: All the questions about DU and Gulf War Syndrome are not yet answered’, International Journal of Health Services, vol 36, No 3, 2006: 503-520, McDiarmid MA. et al., Journal of Toxicology and Environmental Health, Part A, 67:277–296, 2004. 遺伝物質に作用するのは、ウランのアルファ粒子なのか、化学毒性なのかについて、論争が続いている。See Royal Society, Health Hazards of Depleted Uranium Munitions: Part II, London: Royal Society, March 2002; Hindin R., Brugge D., Panikkar B., ‘Teratogenicity of Depleted Uranium Aerosols: A Review from an Epidemiological Perspective,’ Environmental Health, 2005, 26(4): 17. Albina L., Belles M., Gomez M., Sanchez D.J., Domingo J. L., ‘Influence of Maternal Stress on Uranium-Induced Developmental Toxicity in Rats,’ Experimental Biology and Medicine, 2003, 228 (9):1072-1077; Arfsten D.P., Still K.R., Ritchie G.D., ‘A Review of the Effects of Uranium and Depleted Uranium Exposure on Reproduction and Fetal Development,’ Toxicology and Industrial Health, 2001, 17: 180-191.  
42.   長崎、太田病院のホンダ・コウヤは、放射線影響研究所が201112月に公表した文書で、ABCCが黒い雨による被曝と紫斑および脱毛の関連に関する調査を実施していたことを知った。13,000人の人びとが黒い雨で被曝していた。爆発後の直接被爆量は、1キロ圏内で4,500ミリシーベルト、2キロ圏内で100ミリシーベルトだったが、雨や地表放出による10ないし35ミリシーベルトの間接被爆は2キロ圏を超えて拡がり、公表を抑えられていた。See ‘Black Rain: Fruitless data on the A-bomb survivors’, NHK, 1 September 2012, here
43.   ハンフォードは、ワシントン州のコロンビア川に立地するプルトニウム生成工場だった。ロッキー・フラッツは、米国原子力委員会がコロラド州アーヴァダで所有しているが、当初、ダウ・ケミカルが操業していた。金属生成品はロッキー・フラッツに搬入され、原子炉に都合のよい形(「プルトニウム・ピット」)に加工され、さらにパンテックス工場に出荷され、そこで最終的に爆弾に組み込まれる。1984年までに、多くの世帯が病気や癌のためにハンフォードを離れることを余儀なくされた。トム・バイリーは倍賞を求める交渉団体のリーダーであり、最終的に放射線被曝賠償法(1990年)によって賠償が認められた。現在も、ハンフォードの敷地内に埋められた残存プルトニウム廃棄物(10トン、タンク67基、71万平方メートル)が懸念材料になったままである。
44.   Graeub R., The Petkau Effect – The Devastating Effect of Nuclear Radiation on Human Health and the Environment, New York: Four Walls Eight Windows, 1994; Burlakova E. B., Naidich V., The Effects of Low Dose Radiation: New Aspects of Radiobiological Research prompted by the Chernobyl nuclear disaster, Utrecht and Boston: VSP, 2004.
45.   See Sternglass E., Secret Fallout: Low level radiation from Hiroshima to Three-Mile Island, New York: McGraw Hill 1981.
46.   Hesse-Honegger C., Heteroptera, New York: Scalo Publishers, 2002.
47.   これらの数値は、ベラルーシ、ロシア、ウクライナ、IAEA、世界銀行グループ、WHOUNSCEARの代表らが出席した2005年チェルノブイリ・フォーラムで再確認された。See here.
48.   Hesse-Honegger C., Wallimann P., ‘Malformation of True Bug (Heteroptera): a Phenotype Field Study of the Possible Influence of Artificial Low-Level Radioactivity’, Chemistry & Biodiversity, 2008, Vol. 5, Issue 4, pp. 499-539. See also Tom Raum, Associated Press, ‘U.N.: Worst effects of Chernobyl disaster may yet occur’, Record Journal, 26 April 2000; Rebecca Harms, ‘The Chernobyl Legacy’, 9 June 2006, #645-646, here.
49.   Møller A., Mousseau T. et al., ‘Abundance of birds in Fukushima as judged from Chernobyl,’ Environmental Pollution, Vol 164, May 2012: 36–39, here; ‘Cataracts in the eyes of birds in Chernobyl and Fukushima’, The Economist, 7 September 2013, here.
50.   日本獣医生命科学大学の研究チームによる調査で、ニホンザルの筋肉組織から25,000ベクレル/kgが検出された。‘Scientists in groundbreaking study on effects of radiation in Fukushima’, Asahi Shimbun, 10 April 2012, here.
51.   ‘Surviving at the Ranch of Hope: Irradiated Cows from Namie, Evidence of the Nuclear Reactor Accident’, Tokyo Shimbun, 6 September 2013, here in ‘Ranch of Hope – Fukushima’ Official Blog, here; also ‘The man living within20km of the nuclear reactor: Alone in the Zone’, Vice, 10 March 2013, here.
52.   ‘3100 Bq/kg of Radioactive Caesium from Wild Mice in Kawauchi-mura’, EX-SKF, 13 May 2012, hereNHK, 14 May 2012, here. The Forestry and Forest Products Research Institute also measured worms (19,500 Bq/kg Cs137), leaves (319,000 Bq/kg Cs137) and soil (5cm - 20,900 Bq/kg Cs137). See ‘High radioactive Caesium levels detected in worms 20 km from nuke plant’, Mainichi Daily News, 6 February 2012, here; ‘High Caesium found in earthworms’, Japan Times Online, 8 February 2012, here.
53.   ‘Scientists detect highest Caesium levels in a year in Fukushima,’ Asahi Shimbun, 4 July 2013, here.
54.   Reiji Yoshida, ‘Tepco raises estimate to 400 tons a day’, Japan Times, 27 September 2013, here.
55.   201373日から5日にかけて、海から6メートル地点で全ベータ4,300,000ベクレル/m33日間で1.4倍の上昇)、地下水から全ベータ900,000,000ベクレル/m3を検出とFukushima Diaryが報告した。これは、これまでに東京電力が公表した最悪の検出値である。ストロンチウム90の正確な検出値は公表されていない。See here.
56.   ‘How a Scientist Was Censored by the Japanese Government After the Fukushima Accident’, Fukushima Voice, 27 September 2013, here; Kanda J., ‘Continuing 137Cs release to the sea from the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant through 2012’, Biogeosciences Discussions, 10: 3577-3595, 2013, here; Geoff Brumfel, ‘Oceans still suffering from Ocean still suffering from Fukushima fallout: Continuing leaks and contaminated sediment keep radiation levels high’, Nature, 14 November 2012, here.
57.   Aoyama M., ‘Fukushima derived radionuclides in the ocean’, here, Negishi Takuro, Fujiwara Shinichi, ‘Contaminated water flowing into ocean despite Abe's claim’, Asahi Shimbun, 20 September 2013, here.
58.   トリチウムで汚染した水は約10日で人体から排泄される(ガーランド)としても、(トリチウムは動植物の組織に結合するので)有機的に結合したトリチウムは、10年またはそれ以上の長期にわたり体内に残留しかねず、その場合の常時被曝は慢性被曝になりうる。トリチウム汚染水によるトリチウムは、生物遺伝の分子的な基盤であるDNAに組み込まれかねない。ほとんどの研究は、生物体内のトリチウムが、癌、遺伝的影響、発達異常、生殖への影響など、典型的な放射線効果をおよぼしうる(ストロウメ、ライトマー、トロク、ドブソン)。研究の結果、3H(重水)被曝による損傷に閾値があることを示す証拠が見つからず、高線量トリチウム被曝よりも、むしろ低線量トリチウム被曝のほうが、より多くの細胞死(ドブソン)、変異(イトウ)、染色体の損傷(ホリ)を引き起こすことが判明している。トリチウムが原因となる線量あたりの損傷は、エックス線またはガンマ線のそれの2倍ないし3倍も大きい(ストロウメ、ドブソン)。トリチウムを水から除去する技術は達成されていない。See Folkers C., ‘Tritium: Health Consequences’, NIRS, 2006, here
59.   Mycle Schneider, Antony Froggatt et al., The World Nuclear Industry Status Report 2013, 30 July 2013, here.
60.   ‘Sun, sand, surf and radiation in shadow of Fukushima’, The Daily Tribune, 1 September 2013, here.
61.   緊急災害情報サービスが引用した米国立海洋大気庁情報:国境を超える生物圏災害として、カナダ(ツクトヤクテク)、ロシア(カクトヴィク、チュクチ)、アラスカ(バロー、北極圏野生生物保護区)で200頭を超える病気または死亡したアザラシが見つかっている。Biological Hazard in MultiCountries on Thursday, 13 October, 2011. このことは、MSNBC、ロイターなど、主流報道機関も伝えている。See ‘Independent fisheries scientist Alexandra Morton reported the damage to sock eye salmon. See Lake Babine sockeye fishery at risk of unprecedented closure’, The Globe and Mail, 12 August 2013, here.
62.   Carrie Arnold, ‘Massive Starfish Die-Off Baffles Scientists,’ National Geographic, 9 September 2013, here.
63.   2011523日、50,000人の署名で武装した数百人の親たちが文部科学省庁舎を包囲し、この限度の引き下げを要求した。しかしながら、2013121日の公聴会の3か月後、日本の高等裁判所は、日本の高等裁判所は、郡山市から疎開をする権利を求める子どもたちの抗告を却下する決定を下し、100ミリシーベルト/年以下の健康への影響は確認されていないとする公式見解を反映した。「ふくしま集団疎開裁判」抗告側弁護団長、柳原敏夫の記者会見を参照のこと。
64.   These are akin to the recommendations offered by Russian radiation specialist Alexey Yablokov on 15 April 2011, concerning the viable actions the Government could take in response to the Fukushima disaster. See Penney M., Selden M., ‘What Price the Fukushima Meltdown? Comparing Chernobyl and Fukushima’, here.

66.   法政大学の牧野英二教授は、フクシマ惨事が国家の「政治的、社会的、経済的、道徳的基準がガタガタになっているありさま」を示唆しており……「日本は崩壊の瀬戸際にある」と述べた。Fukushima: Is There a Way Out?’, Arirang TV, 9 September 2013, from 46:00, here.

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