2013年9月15日日曜日

【海外論調】#CTVニュース フクシマ放射能漏れ:よくある質問

凡例:(原注)〔訳注〕
カナダ:CTV NEWS




 

フクシマ放射能漏れ:知っておくべきこと
福島第1原子力発電所の地下汚染水貯蔵タンクの脇を歩く建設作業員。2013612日付け資料写真(AP Photo/Toshifumi Kitamura, Pool



ファンイー・スーン CTVニュース Fan-Yee Suen, CTVNews.ca 
2013
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福島第1原子力発電所を巨大地震と津波が破壊したあと2年以上経過して、原発の防護システムに新たな漏れが見つかり、原発運営会社に対する社会の信用は落ち込むばかりである。
今週はじめ〔820日〕、東京電力株式会社は、20113月、巨大地震と津波のあと、急ごしらえされた一時貯蔵タンクから、およそ300トンの高レベル放射能汚染水が漏れだしたことを明らかにした。
資金繰りが苦しい同社によると、水漏れしたタンクは想定耐用年数わずか5年のラバー・パッキング継ぎ目材を用いて組み立てられていた。
東京電力は、水漏れしにくい溶接継ぎの貯蔵タンクを新たに造るというが、昨年来、5基のラバー継ぎタンクが水漏れを起こしているにもかかわらず、これをも使いつづけるともいう。
今週の汚染水漏れニュースの最新版は、今年の夏早く、放射能に汚染された――損傷した原子炉建屋を通るさいに微量の汚染を帯びた――地下水が海に浸出するのを防ぐために全力を尽くしていると東電が認めたあとにもたらされた。
東電担当者らは、1日ごとに約300トンの有毒水が太平洋に流出していると見積もっており、これは8日ごとにオリンピック水上競技規格サイズのプールを一杯にするのにじゅうぶんな量である。
日本政府は綻(ほころ)びにあせって、浄化対策にこれまでに増して直接的な役割を担うことになり、このことが東京電力にとって、一部の批評家のいう勝ち目のない戦いに対するこれまで以上に攻めの姿勢で対処することを迫る圧力をいや増しに高めることになる。
以下に掲げるのは、損傷した福島第1原子力発電所についての基本的な項目をいくつか集めたQ & Aである。

#1. 漏れをふさぎ、さらなる放射能汚染水の海中浸出を止めるために、なにができるのでしょうか?
昨年、公表された“full status report”〔福島第一原子力発電所1~4号機の廃炉措置等に向けた中長期ロードマップ〕によれば、東電は放射能汚染水を統御するために、一連の対策をすでに定めています。悪運を背負った同社は、原発わきの山から流れ降りてくる水が原子炉建屋の地下に浸透する前に、この流れの経路を変えるため、地下水バイパス・システムを構築しました。この解決策は水をほとんど汲み上げていません。
最近の企てとして、日本政府は地下凍土を築こうとしています。報道によれば、この計画は土を凍らせるために地中にパイプを埋設するものです。
日本政府当局者には、前向きに考えられたハイテク計画がこの戦略提案であるという向きもいますが、このアイデアは新たな間に合わせ解決策にすぎないという専門家もいます。
「これは、なんら恒久性の期待できない解決策だ」と、Fairewinds Energy Education〔フェアウィンズ・エネルギー教育〕の核エンジニア、アニー・ガンダーセン氏はCTVニュースにいいました。
「土を凍らせることの問題点は、地震がくるや否や電力喪失となり、凍土がぬかるみになって、抜き差しならなくなります」
ガンダーセン氏は過去に福島原発を訪問したことがあり、2メートル幅で岩盤レベルの深さの溝を掘削し、大自然の産物である火山性物質、ゼオライトという材料でそれを充填するほうが良い解決策になるといいます。
「これは、放射性アイソトープを濾し取るのに信じられないほど優秀です。だから、防護壁の内部にあるものは、なんであれ内側に留まったままであり、外部になにがあっても、防護壁はきれいなままです」とガンダーセン氏はいい、このプロジェクトの値札は、10億ドル内外であるだろうと見積もっています。

#2. なにが危機を永続化しているのですか?
何人かの専門家によれば、職務怠慢の政府と「破産企業」のために、福島第1原子力発電所の浄化作業は足を取られています。
「東京電力は日本政府の内部に巨大な影響力をふるっています」と、立教大学のアンドリュー・デウィット教授〔当ブログ記事「東京電力の闇のなかで」参照〕はCTVニュースにいいました。「基本的にいって、破産企業が放置され、福島第1原発の浄化と解体のために、ほとんど独自の裁量で作業にあたっているのです」
デウィット教授は、昨年、東京電力が国有化されたが、国の核監視当局をはじめ、どの規制機関にも直接答えないと付言し、核監視当局がその規制・審査権を十全にはふるってこなかったといいました。
「担当機関がふたつあって、ほんとうに単独でこれを担当したり、単独で責任を負う者がいないのです」と教授はいいます。「事の重大さを考えれば、どうにもこうにも我慢ならないお膳立てです」
「唯一の望み」が人気のある安倍晋三総理大臣ということになるといい、教授によれば、首相は豪腕の東電に対抗しえて、同社がなにをすべきか、いえる日本随一の人物だといえるそうです。
しかし、デウィット教授は、安倍首相の政治的関心を考えれば、これが実現するのか疑問だとしています。
「首相の優先事項は、憲法を書き換えたり、国家を地政学的に置き換えたりすることにあります」とデウィット教授はいいました。「ですから、この問題について、首相の関心はまったくの些末事だということのようです」
專門家らはまた、首相の関心が、日本の衰退する経済を再覚醒させるために、日本の核エネルギー計画を再出発させることにあることを考えて、浄化作業に金を注ぎ込む政治的な動機はほとんどないと信じています。
「問題は、日本政府がこの戦いに動いていないことにあります」とガンダーセン氏は語り、浄化作業全体の経費が少なくとも5,000億ドルになるといいました。
「安倍首相率いる日本政府は、核エネルギー計画を再出発させようとしていますので、(この経費を)認めたくなくて、必要な最後の手段として、日本国民に『ああ、ところで、みなさんは新たに5,000億ドルの債務を負うことになりますよ』ということになります」と氏はいう。
ガンダーセン氏によれば、近ごろ報道されている損傷原発の問題の多くは、2年以上も前、災害の勃発時に専門家らが予告していました。
「問題の根っこは、予測可能でなかったということにではなく、2年前、日本政府が態勢を強化して、これが戦争であるかのように、戦うだけの勇気がなかったことにあります」とガンダーセン氏はいって、政府は浄化作業を予算執行の問題として扱ってきたと付言しました。
「戦争は予算にもとづいて戦うものではありませんし、日本政府は東京電力がこの戦争を予算問題として戦うことを容認したのです」

#3. なにが「未知」のままになっていますか?
東京電力は2011年の災害のあと、損傷した原子炉を冷却するために不断の注水をつづけてきた結果、貯蔵量が累積した放射能汚染水の数度にわたる漏出事故など、長くなる一方の問題のカタログに向き合ってきました。
どこに溶融した燃料の中核部分があるのか、だれにも確かなことはわかりませんが、損傷した炉心から溶け落ちた放射性物質の一部が地中に移動したと信じている専門家らもいます。だから、最近の水中放射線レベルの急上昇は、地下水が溶融炉心に接触した結果なのかもしれません。
今月はじめ、原発の東側に位置する地下水観測坑の放射能レベルは、セシウム1341リッターあたり310ベクレル、セシウム137が同650ベクレルになったと東京が発表しました。
世界保健機構によれば、1リッターあたり300ベクレルの飲用水は、自然背景放射線による年間被曝量、または胸部レントゲン検査10ないし15回分の被曝量にほぼ匹敵します。

#4. なにが「既知」のことになっていますか?
東京電力は損傷した原子炉を冷却するために、施設にポンプで注水しては、汲み上げています。だが、その水は放射性物質で汚染されており、貯蔵タンクの漏れのために海に流出しています。
東京電力は漏れているタンクの汚染水を再生する企てとして、溜まりに溜まった汚染水を海中に排出する前に、放射性物質を浄化する最先端濾過装置に賭けています。だが、IAEA4月報告によれば、この濾過装置は「期待された結果を達成しておらず」、いまだに未完成技術だとのことです。
高レベル放射能が海中で見つかったのはなぜかという疑問の背後にあるものとして、毒性水の漏れに加えて、専門家らはもうひとつの要因、毎日、山々から降りてきて損傷した原子炉の地下に流れこむ地下水の自然な動きを指摘しています。その地下水が海に流れでないようにすることは、東京電力が対処してきましたが、頭痛の種になっています。国連国際原子力機関の報告によれば、「地下水の原子炉およびタービン建屋への継続的な侵入に起因する膨大な量の液体の蓄積は状況の安定性に影響を与えている」のです。

#5. なにが世界の人々の潜在的なリスクになっていますか?
健康リスクの問題は不透明であり、質問する相手によって答えがさまざまに変わります。
ガンダーセン氏は今年が〔北アメリカ大陸〕西海岸の魚を食べる最後の年になるといっていますが、氏によれば、太平洋への毒性水の大量流出によって、海はすでに汚染されています。
太平洋横断経路のほぼ半ばで、科学者たちが通常の10倍に達するレベルのセシウム量を測定している、と氏はいいます。
ガンダーセン氏は、自然状態のセシウム量のレベルは1立方メートルあたり約1ベクレルであるといいました。現在のレベルは1立方メートルあたり10ベクレルになっているというのです。
「もちろん、科学者たちはこれでもまだ低レベルだというでしょうが、海はこれほど広大であり、海を頼りにするとても多くの生物がいます…だから心配ですし、原発は漏出を続けていますので、これはますます募っていく心配なのです」
だが、ブリティッシュ・コロンビア州疾病管理センター〔B.C. Centres for Disease Control〕の公衆衛生緊急管理部長、ボニー・ヘンリー博士によれば、海は広大なので、希釈効果が生じ、原発直近地域以外の人間を、どのような健康リスクからも守ってくれます。
「希釈要因と時間要因によって、ブリティッシュ・コロンビア州には健康リスクの懸念はありません」とヘンリ博士はいいました。
彼女は、カナダで一般に食される太平洋の鮭は、その回遊経路に日本近くの海域が含まれないので、損傷した福島第1原発からの汚染水で被曝してはいない、と言い足しました。
「わが国の享受する太平洋の鮭は、ふつう日本周辺の海域ほど遠くまで回遊しません。たいがいアラスカ湾周辺と太平洋中央部まで回遊するだけです」

#6. なにが原発直近地域の人々のリスクになっていますか?
今年はじめに公表されたWHO報告〔日本語参照文献「WHOフクシマ原発事故健康リスク評価に対する批判的分析〕によると、研究者らは、事故直後に放出された放射能が地域住民の生涯発癌リスクを「いくぶん増大させる」原因になりうると結論づけています。
しかしながら、福島県内でも原発直近地域の圏外では、「基準確率内の自然偏差」を超えて観測しうる癌の増加はないと同報告は記しました。
だが、2011年の救援作戦に従事していて放射線に被曝した結果、健康が劣化したと主張する人たちもいます。
スティーヴ・シモンズ一等海尉は、自分の筋肉量を30パーセント失い、自立する能力を喪失したとJapan Daily Press に語りました。
「彼がフクシマの放射能に被曝するまで、わたしたちにはなんの健康問題もありませんでした」と、シモンズ氏の妻、サマーさんはいいます。「彼の筋肉の衰えは、24時間介護が必要な段階にまで進行しました」
それでも、シモンズ氏の申立てにかかわらず、医療専門家らはアメリカ国防省に勤務の者も含め、診断を提示できないでいる、とJapan Daily Pressは伝えています。
最近の漏出では、毒性の水たまりの上50センチメーター高さで測定した放射線レベルが1時間あたり約100ミリシーベルトになりました――原発作業員に許容される5年間の最大被曝蓄積値に相等します。

#7. 東京電力の近い将来の計画は、どうなっていますか?
東京電力は、損傷した福島第1原発4号炉の高レベルに放射能化した400トンの使用済み核燃料を11月に除去することにしています。
この作業は、ガンダーセン氏によれば、燃料集合体が破損したり、隣り合わせの束に接近しすぎたりすれば、大量の放射能を放出するなど、リスクをはらんでいます。
「福島第1原発で問題なのは、(使用済み燃料を保持する)枠が傷んでいることです。だから、東京電力は枠からたやすくは燃料を抜き取ることができないでしょう」と氏はいい、2011年の地震と津波が残したガレキがあり、水が濁っているので、原発のオペレーターたちはコンピュータ制御のアーム〔マニピュレータ〕を使えないだろうと付け加えました。
「日本人は簡単に引き抜けると考えているようですが、わたしの経験では、たやすい仕事にはなりません」とガンダーセン氏はいいました。
状況がどれほど酷くなりうるか、不透明ですが、最近、発行されたWorld Nuclear Industry Status Report『世界核産業動向年報』〕掲載の独立コンサルタント、マイクル・シュナイダー、アントニー・フロガット両氏の記事によれば、「4号炉使用済燃料プールからの全面放出は、封じ込めも統御もできず、史上空前の深刻な放射能災害になるだろう」と書かれています。

本稿はAP通信社資料を参照

Digital Extra
Photos
2013820日付け空撮画像:
福島第1原発(AP / Kyodo News
福島第1原発、放射能汚染水タンクの近くで
測量をしている防護服姿の作業員たち
AP / Issei Kato, Pool, File

ポップアップ説明文の日本語訳を読む ⇒ 数字で見るフクシマ

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