2012年8月8日水曜日

クリストファー・クレメント氏による内閣官房「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ」プレゼンテーション資料


まず、内閣官房に設置された「低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループの【第5回会合:20111128日】を覗いてみましょう…
·              開催案内
·              議事次第
·              出席者一覧
·              発表資料1:ICRPと事故後の(放射線)防護に関する提言クリストファー・クレメント 国際放射線防護委員会(ICRP)科学事務局長)
·              発表資料2:原子力事故後の生活環境の復旧―チェルノブイリ事故からの教訓ジャック・ロシャール 国際放射線防護委員会(ICRP)主委員会委員)
·              結果
·              議事録
この会合の出席者一覧を開いてみると…
低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ
第5回出席者
平成23 11 28
(五十音順)
神谷 研二 福島県立医科大学副学長 広島大学原爆放射線医科学研究所長
近藤 駿介 原子力委員会委員長 東京大学名誉教授
酒井 一夫 (独)放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター長
東京大学大学院工学系研究科原子力国際専攻客員教授
佐々木 康人(社)日本アイソトープ協会常務理事 
前(独)放射線医学総合研究所理事長
長瀧 重信(共同主査)長崎大学名誉教授 元(財)放射線影響研究所理事長
丹羽 太貫 京都大学名誉教授
前川 和彦(共同主査)東京大学名誉教授
(独)放射線医学総合研究所 緊急被ばくネットワーク会議委員
「有識者」のそうそうたる顔ぶれに加えて、議事次第を開いてみると、政府側からは次の面めんが出席しています…
細野原発事故の収束及び再発防止担当大臣
中塚内閣府副大臣
佐々木内閣官房副長官補
菅原原子力被災者生活支援チーム事務局長補佐
鷺坂環境省水・大気環境局長
安田内閣審議官
伊藤内閣審議官
矢島内閣審議官
このワーキンググループの最終会合が開かれたのは1215日であり、野田佳彦首相が翌16日に「福島第一原発事故の収束」を宣言したのと密接に関連していると考えても、間違いないはずです。
いまさら言うまでもないですが、政府の放射能汚染対策は全面的にICRP勧告に依拠しています。したがって、第5回会合におけるICRP幹部らによるプレゼンテーションはとても重要な意味を持つはずです。ICRP報告者2名のうち、ロシャール氏によるプレゼンテーション「原子力事故後の生活環境の復旧~チェルノブイリ事故からの教訓(日本語)」はすでに当ブログで紹介していますので、ここにICRP科学事務局長、クリストファー・クレメント氏によるプレゼンテーションの日本語訳を投稿します。
一言、翻訳者の感想を述べさせていただくと、科学事務局長の肩書きを掲げながら、クレメント氏のプレゼンテーションには「科学の香りがなく、政治の匂いが充満している」ということになるしょうか。
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スライド1
国際放射線防護委員会
ICRPおよび事故後の防護に関する勧告
日本国内閣官房プレゼンテーション
東京‐20111128
クリストファー・クレメント CHP
ICRP
科学事務局長
スライド2
概要
l         国際放射線防護委員会
l         事故後における放射線防護に関するICRP勧告
l         ICRPと日本で実施された活動
スライド3
国際放射線防護委員会
l         1928年設立
l         公益のために放射線防護に関して独自に勧告
l         放射線防護システム:基準、法規、助言、計画、実施のための世界的な基盤
l         科学、数値データおよび経験
スライド4
ICRP機構
ICRP主委員会  科学事務局

1委員会 2委員会 3委員会 4委員会 5委員会
  影響   線量    医療   応用    環境
作業部会 作業部会 作業部会 作業部会
放射線防護専門家の独立・国際団体
放射線防護科学・政策に関する専門家
33
か国・6大陸の240名以上
スライド5
事故後の放射線防護に関する
ICRP
勧告
ICRP出版物109および111
スライド6
ICRP出版物109および111
出版物109:緊急時被曝状況における人びとの防護に関する委員会勧告の適用
出版物111:核事故または放射線緊急事態後の長期にわたる汚染地域に居住する人びとの防護に関する委員会勧告の適用
無料公開:201144
スライド7
複雑な問題
l         数多くの要因:健康、環境、経済、社会、心理、文化、倫理、政治など
l         重要な鍵は、状況の管理において地域住民と専門家に関与させること
l         国および地方レベルの当局は、住民の関与および権限付与のための条件をつくり、手段を用意する
スライド8
防護戦略
l         防護戦略:多数の防護対策
l         個この防護対策だけでなく、防護戦略全体を最適化する
l         防護対策の実施は:
・中央政府による
・当局、専門家、学術者によって地域的に
・当局の支援により自助対策として
スライド9
参照レベル
l         最適化は参照レベルが指標となる
(福島に関連した時間枠を示す)
l         公衆防護
・緊急時被曝状況(月単位):20100ミリシーベルト
・現存被曝状況(数年):120ミリシーベルトの最低限
・長期(10年またはそれ以上):年間1ミリシーベルト
l         参照レベル値と時間枠は、地域条件によって場所ごとに異なる
スライド10
参照レベルの選択


スライド11
防護の最適化

l         放射線その他のリスクベニフィット
バランス

l         線量を参照レベル以下にまで低減すること






スライド12
時間経過後の残存線量


スライド13
時間経過後の残存線量



l         最も高い線量に被曝している人びとに注目


l         対策実施によって線量は低下




スライド14
被曝状況
計画被曝状況
放射線源の計画的な扱いによる
緊急時被曝状況
予期しない事態であり、緊急対策が必要
現存被曝状況
制御決定が実行されたあとの状況
スライド15
緊急時被曝状況
l         緊急事態に対応した行動
l         潜在的に高レベルの被曝
l         中央集権的な意思決定
l         20100ミリシーベルトの範囲内の参照レベル
現存被曝状況
l         長期にわたる管理のための対策
l         生活条件を改善するための最適化
l         より中央集権的でない戦略
l         120ミリシーベルトの範囲内で低目の参照レベル
スライド16
移行の決定
l         放射線状況に関する適切な知見:
環境、食品、物品および人びと
l         状況に適合して組織立った国家機関と地方自治体
l         復興のための意思決定と対策実施に地方自治体、専門家、地域住民を関与させる方策
l         さまざまな地域がそれぞれ異なった時期に移行してもよい
スライド17
避難からの帰還
l         帰還許可権限は当局に帰属する
l         現存被曝状況の参照レベルと一致させる
l         必要な能力:
・潜在的な健康への影響に対する防護
・品位あるライフスタイルと生計手段を含む維持可能な生活
l         個人の選択
スライド18
当局による対策
l         建造物、土地、植生の除染
l         環境と生産物のモニタリング
l         廃棄物管理
l         監視
l         情報、指導、指示、装備
(たとえば、測定のために)
l         専門グループのための特定の情報
スライド19
自助的な対策
地域専門家と住民によるモニタリング
・生活域の線量率
・地場食品
・自分自身および扶養義務者(子どもと老齢者)の内部被曝
合理的に達成可能なかぎり低い被曝量を維持するために習慣を適応させるのを助けるために
当局による促進手段
・モニタリングのための条件と手段
・被曝状況に関する一般情報
・被曝量削減方法に関する一般情報
・住民・専門家参加の地域フォーラム
スライド20
モニタリングの有効性
l         モニタリング記録保管システムの確立
・リスクのあるグループを特定するために特に重要
l         健康監視の整備
l         健康台帳の整備
l         いつでも防護戦略の修正ができるようにしておく
スライド21
生活必需品
l         地場生産者、地場消費者、その他の消費者の利害
l         長期にわたる規制は維持可能な発展に影響をおよぼす:政策目標は、放射線品質の改善

l         生産、加工、流通を最適化する
l         消費者の適切な選択を促す
l         特に食品について、キログラムあたりベクレル、またはリットルあたりベクレルで表示される参照レベルの導入が重要
スライド22
ICRPおよび日本で
実施した行動
スライド23
ICRPおよび日本で実施した行動
l         ICRP勧告が全般的に採用実施されるか否かは別にして、ICRPは政府その他の実施した行動に論評を加えない
l         ICPRアクション
・日本政府と国民を助けるため
・防護システムの改善するために教訓を学ぶため


スライド24

ICRP 2011年3月21日付け書簡 日本語 原文

スライド25
ICRP出版物111
核事故または放射線緊急事態後の長期にわたる汚染地域に居住する人びとの防護のための委員会勧告の適用


無料公開:201144


スライド25
ICRP作業部会84
l         日本における原子力発電所事故の当初における教訓にかんがみ、ICRP副委員長、アベル・ゴンザレスを部会長として設置されたICRP主委員会の作業部会
l         当初に学んだ教訓
・放射線防護システムに関連する
・福島第一事故のさい、またはその後の被曝から人びとを防護するために実施された活動に関連する
l         報告は2012年後半に取りまとめられる
・放射線防護システムの潜在的な改善を含む探求のためのMCに対する勧告
スライド26
作業部会84が学んだ教訓
l         ICRPにとって、その防護システムを改善するため
l         日本政府または東電に向けられたものではない
l         11件の事柄が特定され、作業は継続中
l         最終報告は1年以内に
スライド27
進行中の作業
作業部会84が特定した事項
l         消費財の放射能に関する一貫性のない合意
l         「汚染された」国土の改善および「汚染された」がれきの廃棄に関する指導方針の欠如
l         放射性物質の不慮の大量放出を受けた環境モニタリングに関する勧告の欠如
l         放射線防護の量と単位における混乱
l         内部被曝を規制するシステムに対する誤解
l         損失調整済みの名目的なリスク係数の誤った解釈
l         線量限度、規制、参照レベルに関する誤解
l         救助要員のための放射線防護に関する勧告の欠如
l         放射線防護手法の伝達が課題
l         両親らは子どもたちが適切に防護されていないと感じている
l         事故被災者の汚名
スライド29
追加的な行動
l         福島第一事故に関連して学んだ教訓を反映した、さらに長期にわたる活動のための参照文献:
     ICRP出版物109、緊急時被曝状況における人びとの防護のための委員会勧告の適用
     ICRP出版物111、核事故または放射線緊急事態後の長期にわたる汚染地域に居住する人びとの防護のための委員会勧告の適用
スライド30
ICRP

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