2012年4月13日金曜日

【講演資料】ミハイル・V・マリコ博士 「チエルノブイリと広島・長崎」


5月16日追記【速報】
ミハイル・V・マリコ博士のパワーポイント資料:
北海道大学スラブ研究センター家田研究室サイトで公開されました――
一緒に考えましょう講座「チェルノブイリ講演会
下記は、メーリング・リストに投稿された紹介記事からの引用です:
北大スラブ研究センターの家田先生から、マリコ・ステパーノヴァ講演会のパワーポイント資料を見やすくアップしたとお知らせが入りました。特にマリコ博士の資料は4月23日版が貴重なので、是非ご覧ください。各地での講演会の質問や、福島の実情をお聞きになるたびに資料を追加修正なさってきて、23日の資料作り担当の私も相当泣かされましたし(直前に全部差し替えさせられた挙げ句、当日は別資料!)、通訳泣かせでしたが、ご本人も毎晩講演が終わるたびに資料を修正なさってきたわけですから、有り難いと思いました」


ミハイル・V・マリコ博士
(ベラルーシ科学アカデミー)     
1942年生まれ。原子力平和利用の専門家。ベラルーシ国立大学物理学科卒業、物理学博士(1973年)、1966-2008年ベラルーシ科学アカデミーの原子力工学研究所及び物理・化学的放射能問題研究所に勤務の後、2008年からベラルーシ科学アカデミー電力工学研究所の主任研究者。1989-1991年にベラルーシ最高幹部会チェルノブイリ事故対策特別委員会専門委員、1990-1994年ベラルーシ放射能防御中央委員会委員などを歴任。

 福島県内日程
川俣  2012年4月10日(火)13:30~ 川俣町中央公民館F研修室
福島       4月10日(火)18:30~ 福島市MAX福島4F A・O・Z
郡山            4月11日(水)13:30~ 郡山市橘地域公民館集会室
いわき           4月19日(木)18:30~ いわき市文化センター大ホール

福島県外の日程および各会場リンクは次のとおりです――

4月 7日 北海道大学学術交流会館講堂 「一緒に考えましょう」講座チラシ
  13日 大阪大学吹田キャンパス GLOCOLサイト     
     14日 京都大学 生命哲学/生物哲学/生活哲学ブログ
     15日 松江市民活動センター 橘子のブログ(参照記事) 

  17日18:30~ 名古屋市女性会館
  18日10:30~ 名古屋市大日文化小劇場
  21日 東京大学弥生講堂 子ども全国ネット情報発信ブログ 



以下は、4月11日郡山会場で上映されたプレゼンテーション資料を内容を変えずにレイアウトしたものです――


【オープニング】




【スライドM1
チェルノブイリ原発事故の
放射線的・医学的影響
ミハイル・ヴラジミロヴィッチ・マリコ
エネルギー研究所
国立科学アカデミー
ミンスク、ベラルーシ
【スライドM2
ベラルーシの概要
General information about Belarus
国土面積: 207,600 km2
人口: 940万人( 2012
人口密度: 48/平方キロ
国家体制:単一主権国家(連邦制ではない)
首都ミンスクと6つの州ブレスト、ゴメリ、グロドノ、ミンスク、モギレフ、ビテブスク
Brest, Gomel, Grodno, Minsk, Mogilev, Vitebsk)から構成される
ミンスクの人口:180万人、人口最小の州は Grodnoで、 120万人
人口の70% は都市部に、30% は農村部に居住
国土の大半は平野で、最高標高点は海抜346メートル
南部に沼沢地帯が広がる(BrestGomel州)
土壌は概ね均一的で、原油産地は一部にしかない(Gomel)
ソ連時代は国内で最も先進的な共和国で、農業も工業も発展した。

【スライドM3

【スライドM4

【スライドM5
チェルノブイリ原発事故現場


【スライドM6
放射性核種の環境への放出
Release of radionuclides

        チェルノブイリ事故で環境に放出された放射性核種の内多くは半減期の短いものだった。この短半減期が人体に影響を及ぼしたのは原発から数十キロ圏に限られる。
        放射性核種の半減期については次のスライドを参照する。
        原子炉には数百種類の放射性核種が存在する。その物理的、科学的性質は多様で、中でも半減期はそれどれ大きく異なる。
【スライドM7
環境に放出された不活性ガスおよび揮発性粒子


放射性核種


半減期


活動性(PBk*


不活性ガス


85Kr クリプトン85


10.27


33


133Xe キセノン133


5.25


6,500


揮発性粒子


129Te テルル129


33.6


240


132Te テルル132


3.26


1,150


131I ヨウ素131


8.04


1,760


133I ヨウ素133


20.8時間


910


134Cs セシウム134


2.06


47


136Cs セシウム136


13.1


36


137Cs セシウム137


30.0


85
注釈: 1 PBk(ペタベクレル) =1015 ベクレル
2008
年「原子放射線に関する国連科学委員会
UNSCEAR)」報告vol.II、国連、2011
【スライドM8
中間揮発性の化学元素


放射性核種


半減期


活動性 (PBk*


89Sr ストロンチウム89


50.5


115


90Sr ストロンチウム90


29.12


10


103Ru ルテニウム103


39.3


168


106Ru ルテニウム106


368


73


140Ba バリウム140


12.7


240
注釈: 1 PBk(ペタベクレル) =1015 ベクレル
2008
年「原子放射線に関する国連科学委員会
UNSCEAR)」報告vol.II、国連、2011
【スライドM9
不揮発性元素 (燃料粒子を含む)


放射性核種


半減期


量(PBk*


95Zr ジルコニウム95


64.0


84


99Mb モリブデナム99


2.75


> 72


141Ce セシウム141


32.5


84


144Ce セシウム144


284


50


239Np ネプツニウム239


2.35


400


238Pu プルトニウム238


87.74


0.015


239Pu プルトニウム239


24,065


0.013


240Pu プルトニウム240


6,537


0.018


241Pu プルトニウム241


14.4


2.6


242Pu プルトニウム242


376,000


0.00004


242Cm キュリウム


18.1


0.4
注釈: 1 PBk(ペタベクレル) =1015 ベクレル
2008
年「原子放射線に関する国連科学委員会
UNSCEAR)」報告vol.II、国連、2011
【スライドM10
チェルノブイリ原発の事故後
セシウム-137による欧州諸国の汚染状況
De Cortほか。チェルノブイリ後のセシウム沈着によるヨーロッパ汚染地図
汚染レベル単位:キロベクレル/m2およびキューリー/
km2

【スライドM11
チェルノブイリ原発の事故後
セシウム-137による欧州諸国の汚染状況
De Cortほか。チェルノブイリ後のセシウム沈着によるヨーロッパ汚染地図
汚染レベル単位:キロベクレル/m2およびキューリー/
km2

【スライドM12
チェルノブイリ原発事故により自然環境に放出された
セシウム137とヨウ素131の蓄積状況


国・地域


セシウム137


ヨウ素131


ベラルーシ


16.3 PBq (440,000 Ci)*
325.6 PBq
 (8.8 Millions Ci)*
15.2 PBq (410,000 Ci)**



ロシア


19.2 PBq (520,000 Ci)**







ウクライナ


11.1 PBq (300,000Ci)**
180 PBq
 (4.9 Millions Ci)***


ほかの欧州諸国


22.2 PBq (600,000 Ci)**





世界合計


85 PBq (2.3 Millions Ci)**
1,760 PBq 
 (47.6 Millions Ci)**
注釈: PBk(ペタベクレル) =1015 ベクレル
* M. Malico
による評価(1998
** 2008年(2011年)「原子放射線に関する国連科学委員会UNSCEAR)」報告によるベラルーシ、ロシア、ウクライナに関する公式データ
*** I. Likhtarev(ウクライナ)による評価
【スライドM13
チェルノブイリ原発事故によるベラルーシ地方別
セシウム137の蓄積状況 (M.Malkoによる評価)


ベラルーシ国内各地域


セシウム137蓄積絶対量
ベクレル


セシウム137蓄積割合
パーセント


ブレスト


6.3×1014


3.9


ビテブスク


4,3×1012


0.03


ゴメリ


1.1×1016


66.5


グロドノ


2.1×1014


1.3
ミンスク市を含む
ミンスク


2.7×1014


1.7


モギリョフ


4.3×1015


26.6


ベラルーシ共和国合計


1.6×1016


100

【スライドM14
放射能汚染レベルと住民の被曝量に応じた
ベラルーシ共和国の規制地域区分

区域の種類
1年間の
放射線量
チェルノブイリ原発事故による放射能汚染レベル
セシウム137
ストロンチウム90
プルトニウム238239240

ミリシーベルト
/年
kBq/m2
(Ci/km2)
kBq/m2
(Ci/km2)
kBq/m2
(Ci/km2)
継続的放射能管理下にある住民区域
1未満
37 – 185
(1 – 5)
5.55 –18.5
0,37 – 0.74
移住権利区域
1以上
5
未満
185 – 555
(5 – 15)
18.5 – 74
0.74 – 1.85
準移住区域
5以上
555 – 1480
(15 – 40)
74 – 111
1.85 – 3.7
優先移住区域
5以上
>1,480 (>40)
>111
>3.7
避難区域
チェルノブイリ原子力発電所の周囲30キロ圏内。
1986年の5月から7月にかけて住民は避難。
注釈:kBq1000ベクレル。Ci=キューリー


【スライドM15
セシウム13737キロベクレル以上のレベルにある
ベラルーシの汚染地域 - M.Malkoによる評価




汚染レベル ベクレル/m2 (キューリー/m2)


37–185
(1-5)


185-555
(5-15)


555-1,480
(15-40)


>1,480
(>40)


ブレスト


3,800


470






ビテブスク


35











ゴメリ


16,870


6,740


2,760


1,625


グロドノ


1,690


12




ミンスク


2,030


48




モギリョフ


5,490


2,900


1,450


525


合計


29,915


10,170


4,210


2,150

【スライドM16
セシウム13737キロベクレル以上のレベルにある
ベラルーシの汚染地域 - M.Malkoによる評価




汚染レベル ベクレル/m2 (Ci/m2)


37–185
(1-5)


185-555
(5-15)


555-1,480(15-40)


>1,480
(>40)


ブレスト


3,800


470




ビテブスク


35





ゴメリ


16,870


6,740


2,760


1,625


グロドノ


1,690


12




ミンスク


2,030


48




モギリョフ


5,490


2,900


1,450


525


合計


29,915


10,170


4,210


2,150

【スライドM16
表の左側についての注釈:

1986年~2001年期間における各年ごとの被曝量比(パーセント)」

上から403020100


【スライドM17
チェルノブイリ事故において1986426日から831日までの間に放出された放射線核種のうち測定可能だったのはヨウ素131、テルル132、ルテニウム103、 ルテニウム106、バリウム140、セシウム134、セシウム137であり、そのうち全体の 85%を占めたのは短半減期のヨウ素131、テルル132、ルテニウム103、ルテニウム106、バリウム140、セシウム134だった。
ただし、事故後、放射能汚染の指標として用いられたのは同位体セシウム137である。
従って、以下では主としてセシウム137について述べる。
【スライドM18
セシウム137の汚染レベルが555 1,480 kBq/m2 (15 – 40 Ci/km2)であるベラルーシ、ロシア、ウクライナの
農村地域の住民の平均全身被曝線量比較




国名


平均全身被曝線量 ミリシーベルト


1986


1986 – 1995


1986 – 2000


ベラルーシ


23.7


57.8


63.4


ロシア [31]


20


60.4



ウクライナ


26



74


【スライドM19
チェルノブイリ原発事故による
ベラルーシ、ロシア、ウクライナ住民の甲状腺被曝の集団線量






影響を受けた
人口


集団線量
· グレイ


一人当たり
線量*,
ミリグレイ/人




典拠


ベラルーシ


9 996 000


1 270 000


127


Malko M*


ベラルーシ


9 686 000


476 000


49


UNSCEAR**


ロシア*


37 225 000


190 000


5


UNSCEAR**


ウクライナ


50 986 000


963 300


19


UNSCEAR**
注釈:
* M. Malicoによる評価(1998
** 2008年(2011年)「原子放射線に関する国連科学委員会UNSCEAR)」報告によるベラルーシ、ロシア、ウクライナに関する公式データ
*** I. Likhtarev(ウクライナ)による評価
【スライドM20
チェルノブイリ原発事故によるベラルーシ、ロシア、ウクライナ
住民の1986-2005年の間の全身被曝の集団線量




人口 (人)


集団線量
シーベルト


一人当たり線量*
ミリシーベルト/人


典拠


ベラルーシ


10 150 000


30 000


3.0


Malko M


ベラルーシ


10 150 000


24 180


2.4


UNSCEAR


ロシア*


37 225 000


40 100


1.1


UNSCEAR


ウクライナ


51 000 000


61 000


1.2


UNSCEAR
注釈:
* M. Malicoによる評価(1998
** 2008年(2011年)「原子放射線に関する国連科学委員会UNSCEAR)」報告によるベラルーシ、ロシア、ウクライナに関する公式データ
*** I. Likhtarev(ウクライナ)による評価


【スライドM21
19861990年において
チェルノブイリ事故処理にあたった作業員の全身被曝線量 (V.K.Ivanov, Moscow, 2010)




作業員数


平均被曝量 ミリグレイ


ベラルーシ


91,000


51


ロシア


188,174


107


ウクライナ


229,219


151


エストニア


4,832


99


ラトビア


6,065


117


リトアニア


6,960


109


総作業員


526,250


117

【スライドM22
事故処理作業員及び一般市民の
全身自爆と集団的被曝線量の比較
国名
事故処理作業員
一般の市民
H(Coll),
人・シーベルト
比率
%
一人あたりmSv
H(Coll),
人・シーベルト
比率
%
一人あたりmSv


ベラルーシ
3249
10.8
35.7
26751
89.2
2.6


ロシア
14094
35.1
74.9
26006
64.9
0.7


ウクライナ
24228
39.7
105.7
36772
60.3
0.7

【スライドM23
ベラルーシにおいて1986年~2010年の間に蓄積した
集団的及び個別的被曝線量
Numbers of affected persons in Belarus and their collective and population doses accumulated in 1986-2010
 
 分類
 
 人数
平均被曝
線量 mSv
 集団的被曝線量
 人×Sv
 
 30キロ圏からの避難民


24,725



519
 
 事故処理作業員


116,567


~ 35.7


4,161


 自宅に帰還した人


110,275


~ 60


6,617


 避難民と作業員の合計


251567


~45


11,300


 ベラルーシ全体


10,000,000


~ 3


30,000

【スライドM24
19861990年において
チェルノブイリ事故処理にあったった作業員の全身被曝線量
(V.K.Ivanov, Moscow, 2010)



国名


作業員数


平均被曝量 ミリグレイ


ベラルーシ


91,000 


51 


ロシア


188,174 


107 


ウクライナ


229,219 


151 


エストニア


4,832 


99 


ラトビア


6,065 


117 


リトアニア


6,960 


109 


総作業員


526,250 


117 

【スライドM25

ヴィソキ・バロク村(Vysoki Barok, Krasnapolye district, Mogilev region)およびチュジアニ村(Chudziany, Cherikau district, Gomel region)
住民の被曝状況(M.マリコによる推定)






Year
被曝線量, mSv


ヴィソキ・バロク


チュジアニ


汚染レベル, kBq/m2 (Ci/km2) 


2,479 (67) 


5,420 (146.5) 


1986


65.1 


 142.4 


1987


31.4 


 68.6 


1988


19.8 


43.3 


1989


12.1 


 26.5 


1990


7.0 


15.3 


1986-1990


135.4 


296.1 

【スライドM26
ベラルーシにおける新生児に見られる
標準真正先天性奇形の標準発症率
Standardized incidence ratio of the incidence
in obligatory congenital malformations in neonates of Belarus


 項目
区域


管理区域


低汚染区域


高汚染区域


出生数


202,577


156,856


42,611


実数


1,179


938


297


標準値


1,179


912.9


248
  
   実数-標準値


0


25.1


49
    
   実数/標準値


1


1.027


1.198


95%CI of SIR


-


0.943÷1.119


1.055÷1.360


h, mSv


0


0.733


5.976


ERR, %/mSv


-


3.7


3.3


95% of ERR, %/mSv


-


-.7.8÷16.2


0.9÷6.0


AR,%


0


2.7


16.4983165


95% of AR in %


0


-6.0÷10.6


5.2÷26.5

【スライドM26

ベラルーシにおける新生児に見られる
真正先天性奇形の標準発症率
Standardized incidence ratio of the incidence
in obligatory congenital malformations in neonates of Belarus
縦軸「標準発症率」 横軸「被曝量(ミリシーベルト)」


【スライドM27

ベラルーシにおけるチェルノブイル事故起源の
白血病の追加的発症
Additional (radiation-induced) leukemias in Belarus caused by the Chernobyl accident (assessment of M.Malko, E.P.Ivanov et al)


分類


期間


追加的
事例数


追加的事例数の95


相対
リスク


相対
リスクの95%


小児急性白血病


(0-1) year


1987-1992


21


0-52


1.457


1.001-2.120


(0-14) year


1987-1995


197


110-293


1.26


1.145-1.385


成人急性白血病


成人


1986-1992


158


44-280


1.101


1.028-1.179

【スライドM28

ベラルーシにおけるチェルノブイリに起因する
追加的(放射能誘発性)固形がん
Additional (radiation-induced) solid cancers in Belarus
as a result of the Chernobyl accident (assessment of M.Malko)


分類


期間


追加的
事例数


追加的事例数の95


相対
リスク


相対
リスクの95%


総人口に見られる固形がん発症数


胃がん


1991-2009


3466


2729-4211


1.052


1.041-1.064


肺がん


1991-2009


3440


2640-4250


1.043


1.030-1.056


乳がん


1992-2009


1079


436-1729


1.020


1.009-1.033


膀胱がん


1990-2010


874


472-1283


1.044


1.024-1.064


合計


1990-2010


8860


6280-11480




甲状腺がん


1990-2010


9795


9332-10271


2.225


2.167-2.285


nm-Skin


1996-2010


13500



1.18




【スライドM30

ベラルーシ全土における、小児急性白血病の期間平均発生率

縦軸:事例数/10万人  横軸:期間

【スライドM31


■ 予測値 ■ 実数
縦軸:事例数/10万人

【スライドM32
ベラルーシにおける小児甲状腺がん事情
Spontaneous incidence in thyroid cancer in children of Belarus

        小児甲状腺がんは非常に稀な病気である。1966年から85年にかけて(発症時15歳以下の)小児甲状腺がんは21例確認されているだけであり、毎年1例あるのみである。1966年から85年にかけての人・年数に対応する小児甲状腺がん発症事例累積数は年間4.74-10である。この数値はベラルーシにおける人口動態データを基づいて推計された。小児甲状腺がんの発症数をこの人・年数で割ると、このがんのベラルーシにおける発症率が得られ、その結果は100万人・年数あたり0.443事例数となる。次のスライドで、この数値が他のヨーロッパ諸国における小児甲状腺がん発症率と対比される。

【スライドM33

甲状腺がん発症率(標準化前と標準化後)の比較
Time-averaged crude and standardized (World standard) rates of the incidence of thyroid cancers in children


国名(地域)


期間


粗率 106 a-1


標準化率106 a-1


典拠


英国
(イングランド、ウェールズ)


1981-1990


0.6


0.5


[15]


英国(イングランド、スコットランドのがん届け出数


1981-1990


0.6


0.5


[15]


ポーランド


1980-1989


0.5


0.5


[15]


スロバキア


1980-1989


0.7


0.6


[15]


ハンガリー


1985-1990


0.3


0.3


[15]


ウクライナ


チェルノブイリ以前


0.5


-


[16]


ベラルーシ


1966-1985


0.44


-


当報告

【スライドM34

ベラルーシ各州ごとの小児甲状腺がん発症
Incidence in thyroid cancer in children of Belarus (diagnosis at age < 15 years, observed data established by Prof. E.P.Demidchic)


地域


実数


予測値


実数-予測値


相対リスク


ブレスト


165


3


162


55


ビテブスク


11


2


9


5.5


ゴメリ


378


3


375


126


グロドノ


43


2


41


21.5


ミンスク市


62


3


59


20.7


ミンスク地域


42


3


39


14


モギリョフ


43


2


41


21.5


合計


744


18


726


41.3

【スライドM35

被曝許容水準
Acceptable levels of irradiation




対象区分


Year


1986


1987


1988


1989


事故作業員


250 mSv


100 mSv


100 mSv


100 mSv


子供を含む一般住民


100 mSv


30 mSv


25 mSv


25 mSv

【スライドM36
ベラルーシにおけるチェルノブイリ事故由来の
先天性異常と甲状腺がんの放射線リスク係数
Radiation risk coefficients of congenital disorders and leukemia caused
in Belarus by the Chernobyl accident (assessment of M.Malko)


区分


期間


EAR



95% CI
of EAR


ERR/Sv


95% CI
of ERR


真正先天性異常


新生児


1987-1992


-


-


33


9-60


急性小児甲状腺がん


0-1


1987-1992


524


8.4-1274


1208


19.4-2940


0-14


1987-1995


50.3


28.1-74.7


154


8.6-228


急性成人甲状がん


成人


1986-1992


13.9


3.7-24.7


4.9


1.4-8.7

【スライドM37
ベラルーシにおけるチェルノブイリ事故由来
固形がんリスク係数
Radiation risk coefficients of solid cancers in Belarus
as a result of the Chernobyl accident (assessment of M.Malko)



分類


期間


EAR


95% CI
of EAR


ERR/GY


95% CI
of ERR


総人口に占める固形がん


胃がん


1991-2009


60.6


43.5-77.8


16.8


12.0-21.6


肺がん


1991-2009


60.2


41.8-78.9


14.6


10.1-19.2


乳がん


1992-2009


44.3


17.9-70.9


8.0


3.3-12.9


胱がん


1990-2010


13.9


7.5-20.4


14.5


7.8-21.3


甲状腺がん


1990-2010


4.5


4.3-4.7


11.9


11.3-12.4

【スライドM38

原爆被爆と比較したチェルノブイル事故由来の固形がんのEAS(過剰絶対リスク excessive absolute risk )比較
Comparison of excessive absolute risk of solid cancers occurred in Belarus as a result of the Chernobyl accident (M.Malko) and estimated for atomic bomb suvivors (ATB, Preston D.L. et al, 2007, RERF, values of EAR estimated for persons that were irradiated at the age 30 years and that  were alive by reaching the age 70 years)
分類
A. マルコ資料
B. 原爆被爆
AB
胃がん
60.6
9.5
6.4
肺がん
60.2
7.5
8
乳がん
44.3
9.2
4.8
膀胱がん
13.1
3.2
4.1
甲状腺がん
4.5
1.2
3.8

【スライドM39
二倍の被曝線量:
チェルノブイリ事故由来の健康被害
Doubling doses of radiation –induced health effects caused in Belarus by the Chernobyl accident (assessment of M.Malko)


白血病


乳児 (0-1 )


1 mSv


白血病


子供 (0-14 )


5 mSv


先天性異常


新生児


15 mSv


固形がん


住民全員


100 mSv

【スライドM40
ブレスト州の37-185 Bqレベルの汚染地域に住む住民と
汚染されていない地域の住民の主要な肉体的疾病罹患率比較
Comparison of the incidence in general somatic diseases in 1990 of populations of Brest region living in districts with level of contamination 37-185 kBq/m2 and clean districts morbidity


疾病の種類



汚染された3


汚染が認められない5


P


全体


62,023±113.48


48,479±117.9


0.99


感染および寄生疾患


3,251±41.5


2,119.8±34.0


0.99


内分泌系疾患、消化不良、代謝不良、免疫不調:甲状腺腫のあるなしにかかわらず甲状腺機能亢進症を含む


2,340.6±35.4
±74.46.4


1,506.7±28.7
±29.54.0


0.99
0.99


精神病


2,936.0±39.5


2,604.0±37,6


0.99


慢性耳炎


249.9±11.7


166.3±9.6


0.99

循環器疾患:
高血圧、虚血性心疾患を含む


12,060.7±76.2
±3,318.241.9
±5,307.352.42


9,300.4±68.5
±2,39436.1
±4,366.548.2


0.99
0.99
0.99


虚血性心疾患の患者総数のうち:

狭心症を伴う急性心筋梗塞患者



53.6±5.4
44.3
±1,328.626.8


41.7±4.8
17.2
±594.518.1


0.99
0.99
0.99



脳血管疾患:

アテローム性脳動脈硬化を含む


1,981.4±32.6
±1,764.430.8


1,363.2±27.3
±986.723.3


0.99
0.99

【スライドM41
ブレスト州の37-185 Bqレベルの汚染地域に住む住民と
汚染されていない地域の住民の主要な肉体的疾病罹患率比較
Comparison of the incidence in general somatic diseases in 1990 of populations of Brest region living in districts with level of contamination 37-185 kBq/m2 and clean districts morbidity


呼吸器疾患:慢性扁桃腺炎、腺様気管支炎、不特定の気管支炎、気腫性その他の不特定肺疾患を含む



597.0±18.0
±1.891.231.8
±182.19.7


278.1±12.4
±1,359.327.3
±152.99.2


0.99
0.99
0.99


消化器疾患:胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎(アトピー性)、胆石疾患、(胆石に問題がなくとも)胆嚢炎を含む



7,074.4±59.9
±1,895.031.8
±1,468.628.1
±1,147.124.9


5,108.5±51.9
±1,225.725.9
±765.320.5
±658.519.1


0.99
0.99
0.99
0.99


尿・生殖器疾患:腎炎、腎臓症候群、ネプローシス腎臓感染症を含む



3,415.6±42.5
±131.88.5
±649.518.8


1,995.6±33.0
±67.96.1
±522.217.0


0.99
0.99
0.99


女性の不妊症



83.7±2.3


56.2±5.5


0.99


皮膚疾患、皮下脂肪疾患:接触皮膚炎、その他のアトピー性皮膚炎



3,376.7±42.2
±735.420.0


2,060.0±35.5
±350.413.9


0.99
0.99


骨髄および結合組織疾患:変形性関節症、塩発疹性痛風を含む



5,399.1±52.96
±1,170.025.1


4,191.9±47.3
±770.320.6


0.99
0.99

【スライドM42
ベラルーシ全人口と555キロベクレル以上の汚染地に住む
青年及び成人の死亡率(10万人当たり)の比較
Comparison of mortality rates (cases per 100,000 persons) adolescents and adults resettled or lived in areas with contamination level higher than 555 kBq/m2 (15 Ci/km2) with mortality rates of adolescents and adults of the entire Belarus Published data of the Belarusian State Chernobyl Register
Year
死亡率
SE
RB-Mort.rt
SE
1993
1923.97
55.968
1598.48
4.446
1994
1822.14
51.48
1593.44
4.427
1995
1777.63
50.501
1638.32
4.481

【スライドM44
ベラルーシの国民総生産と0-1歳児の白血病発症の
時間的経過による変化
Temporal patterns of the Great National Product of Belarus (in Billions of dollars of the USA, money scale of 1990) and of the incidence in leukemia in children of Belarus in the age group 0-1 year (assessment of M.Malko)

縦軸:GNP、白血病発症率

【スライドM45
先天性異常の発生:
青線は流産緑線は神経管異常
Occurrence of congenital disorders:
 blue curve – spontaneous abortion,
 green curve –neural tube disorders


【スライドM46

どうもありがとうございました

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